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「今の日奈は大好き。私は昔のいい子でみんなから好かれてるお姉ちゃんが大嫌いだったから」
月奈は優しげな笑顔のまま、動きを止めた日奈の両手を取る。
「お姉ちゃんにもわかるでしょう。同じ双子なのに比べられる気持ちが。日奈は明るいいい子、私は陰気で何を考えてるかわからない子。私はそうやってずっと比べられてきたの」
「だからって! だからって……!! 今までの全部、月奈が仕組んでたっていうの……?」
日奈はその手を振り払って大声を出した。
握った拳が怒りに震えるが、それは僅かな間だけで、その後は力が抜けたように腕をだらりと落とす。
「そんなに……私が憎かった?」
日奈の声には悲しみでも怒りでもなく、絶望の色が濃く表れていた。
大きな瞳には光がなく、どこかぼんやりとしている。
「うん!」
対して月奈は幸せそうに大きく頷くと、にんまりと薄気味悪い笑顔を浮かべた。
「10歳の……壊れたゲーム機を日奈のと交換したあの日。気付いたの。私の持っているものと日奈のを交換する方法。日奈は悪者、私がいい子になれば、全部取り替えっこ出来るの。だから私が仕組んだんだよ」
そして踊るようにくるりと身を翻し、うふふと笑う。
空模様は上空の強い風で急激に悪化している。
鈍く曇った天気はまるで日奈の心のように今にも泣き出しそうなのに、月奈は青天のような晴れやかな笑顔を見せた。
踊るように数歩進んでくるりと日奈を振り返ると、弾んだ声で話しかける。
「だからこれからも悪い子で、可哀想な日奈でいてね!」
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