第一話 「ある少女は夢を見る」

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第一話 「ある少女は夢を見る」

殺し屋。 どこかで聞いたことはあるのではないか。マンガでもよくある話だ。 この物語の全ては、そしてこの世界の全ては。元殺し屋である彼女に託された。 「こんな生活つまんない。」 私、杉三巴はそういい放つ。 フツーだった生活がある一言で一気に変わってしまうことは_所詮漫画でしかないものだと思っていたが、やはりこういう事はなにげにあるものだ。根っからボスを崇拝していたわけでもない私が言うのは何だと思うが。 そう思いつつ私は薄暗い廃工場の古ぼけた椅子から立ち上がる。廃工場に椅子の立ち上がるときの悲鳴のような音が響き渡った。この悲鳴ももしかしたら私が張り上げているのかもしれないと思うとこれまでの私は偉いと思う。 二歳のときにここにつれてもらい、ずっと私はこのままの人生だと信じ切っていたし、無論この生活が苦しいと思ったことは一切なかった。 _と思っていた。そう、思っていただけなのだ。 自分は嫌だと思ったことがない?そんなの嘘に決まっていたんだ、心の裏にはいつでもフツーの人を羨む気持ちが残っている。 「さあ、実践しよう。私はフツーの人になる。」 そんな決意をしたにも関わらず、空はまだ薄雲っていた。まるで私をこの場所に閉じ込めるかのように_。 と思っていた私がやばい。うん、そんなわけない。十分後私はついに組織脱獄計画を遂行し、ここから出ることができた。さて、私は次の居場所に向かわなければならない。 「あれ、ここどこ?」 ____やっぱりフツーな人間になるのは、かなり難しいことらしい。 ピーンポーン♪ ようやくついた・・・ついた頃にはもう日は暮れて、あたり一面夕焼けに照らされて真っ赤に染まっていた。 「あっ、来てくれたの!ウレシー!巴ちゃんこれからよろしくね!」 「麗子さん…。スゴい豪邸…。」 「…あら、そう?今日は弟もいないし楽なもんだよ、いつもイタズラしかけてくるんだから~。あとタメで」 「…じゃあ麗子ちゃんで!弟さんいたんだ。」 「そうそう、女子の服が似合う子だよ!お世話はもう二度としたくないけどね。」 この人は麗子さ…いや麗子ちゃん。本名は緑山麗子。中学二年生で私と同い年だ。そして…私を変えてくれた人。でも全くあの言葉にはつりあってない性格なのだ、それでもあの言葉を言えるのはすごい。ちなみに弟さんー緑山幸人くんは、今年4歳だという。お利口さん…ではないらしい。まあ男子そんなもんだ。私のところのボスなんて世界一口の悪い人だった。 「さて、今日の話題だけど…。__部ホントに入ってくれるの?」 「…そうじゃなかったら、なにするんですか。」 「本気か…。まあヨカッタ。どこまで居られるかは、知らないけどこれからよろしくね!」 「はい!」 あっ、そうそう。一つ訂正しておこう。麗子ちゃんは家出した家出っ子だ、つまり幸人くんは“今日は”ではなく毎日居ない。だって家出してきたのだから。…まあ家出した一分後には親にばれて交渉し、ここに居られてるらしいけど。元当主が座を降りるまでの期間限定だとか。ちなみにこれは言及しないのが麗子ちゃんと接触する上でのマナーだ。だから詳細は知らないけど…急に居なくなる可能性もあり得るのだ、悲しいけどね。 そういえば、私がいなくなったことに対してボスは悲しんだりしてるのかな?このままの私で_いいのかな?
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