その仮面が割れるとき

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「俺、そんな心配されるぐらいに辛そうにしてる?」 「……最初と比べると、違いははっきりと」 「そうかー」  有川さんが鍵をくるくると回しながら従業員用の扉を開けてくれた。私は急いで中に入る。 「未成年に心配されるなんて」 「いや、成人してる。お酒飲めないけど、選挙行けるんで。18歳から成人なんで」 「子供に心配されるなんてなぁ」 「子供って言うな? そんな変わらないでしょ」  相変わらずの未成年イジリに有川さんが口を開けて笑った。  エレベーターに乗り、鍵を渡すために警備室がある地下のボタンを押した。 「千香が地下へのボタンを押す……」 「殴りますよ?」 「あっ、すんません」  私は有川さんをじっと見た。こんなにいじられても嫌な気がしないのは、きっと有川さんだからだろう。 「俺さ、アニメ好きなんだよね。だからこの会社に入社して、このカフェに配属を希望したの。まぁこんなに仕事量があるとは思わなかったよねー」 「ブラック企業ですからね、社員さんにとっては」 「そう。全然夢の国じゃなかった。同期も辞めていくし、新しく入った社員もすーぐ辞めちゃうし」  ハァっと有川さんが重たい溜息を吐いた。 「倒れられたら、休めるんだけどなぁ……」  ぼそっと有川さんが言った。無論、エレベーターには私と有川さんしか乗っていないので、その小さな声も私の耳に届いた。有川さんは聞こえてないと思っているのかもしれないけれど。 「……倒れるのも、ありだと思いますよ」 「え?」 「人間、誰だって体調不良になるから。本当は風邪引いてないのに、風邪引きましたって言ってもサボり癖がない人がやったら絶対にバレないし。有川さんは真面目だから、自発的に倒れても誰にも分かりませんよ」
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