その仮面が割れるとき

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「イケメンだわ」  落ち着いたのか有川さんが、私の肩を叩いた。「ありがと」と言って笑顔を浮かべてくれる。目と鼻は赤く染まっていたが、今までのどの笑顔よりも解放されているように感じた。 「みっともねー、未成年の前で泣くなんて」 「いや、だから成人してるから。未成年じゃないから」  ハハッと有川さんが笑った。 「自発的に倒れるねぇ……」 「一人で倒れたくなかったら誰かをまき込めばいいし、一人で倒れて起き上がれなくなったらまだ倒れてていいんじゃないですかね。起き上がりたくない日だってあるじゃないですか。もし起き上がりたくても起き上がれなかったら、その時は誰かに起き上がらせてもらえばいいんです」 「千香さん、大人だね。未成年なのに」 「いや、だから成人してるんだよなぁ。大人って言われるのは悪い気しないけど、その後の台詞で台無しだわー」  また有川さんが声を出して笑った。昔、好きなアニメ映画で印象的な笑うシーンがあったことを思い出した。声を出して笑うと、怖いものが逃げていくんだと。確かにな、と私は思った。今の有川さんは、今までのどの有川さんよりもスッキリして見える。 「じゃあさ、千香さん」 「はい」 「俺と一緒に倒れてくれない?」  私はニッと笑った。 「いいですね。私、そういうワクワクすること大好きです」
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