15人が本棚に入れています
本棚に追加
未来は、それを聞くと「約束が違う」と思う。思うだけではなくて口にも出した。
「主任になるまで待ってくれるって言ったじゃない」
すると、翔太は納得がいかないという表情をする。そして言う。
「結婚と仕事は同時並行でいいじゃない?子供さえいなければ、今と変わらない。僕は好きな人と一緒に暮らしたい」
「あなたは私の仕事が分かっていない。そうよね。総務じゃわからないよ。私はね、現場で製品を作らなければならないの!私たち現場が頑張っているから会社は成り立っているのよ!感謝してほしいわ。結婚したって、翔太の面倒を見る時間なんてない。平日の退社時間は8時、9時よ。夜通し実験をする時もある。わかっているの?」
「家事は僕が全部するから大丈夫」
「今はそう言っていても、実際に毎日帰りが遅い妻に不満を抱かずにいれるの?本当に大丈夫なの?」
「大丈夫としか言えないよ。でも、そのつもりだ。僕は未来の支えになりたいと思っている」
「支えって……なんなのよ!社内結婚なら式だって挙げないわけにはいかないのよ。その準備の時間だって私には無いのよ」
付き合って4年を過ぎてから、二人の間で同じようなやり取りが増えた。
翔太は自分が悪いと分かっていた。未来は最初から「主任になるまで結婚は待って」と言っていたのだから。
翔太は心身ともに自立した女性が好きだった。
でも、そういう女性は意思が強く頑固だ。
最初のコメントを投稿しよう!