3、青山 未来

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 恋愛中の主導権は、熱が低い方が握る。それを未来は理解していた。それに、翔太は、裏切りをするような男じゃないのも、長く付き合えば付き合うほどに良く分かっていた。  だから、未来は余裕を持って時々、文句を垂れ流す可愛い彼氏をそれなりに宥めすかしていた。  付き合って6年目の春、二人は揃って28歳になった。 相変わらず、デートは月に2回、土日だけ。普段は逢わない。毎日、5分のライン電話。  ある意味、この行動が愛情を育てているとさえ未来は思っていた。 付き合いが長くなればなるほど、節度を持って付き合わなければ飽きてしまう。だから、この距離感が丁度いいと思っていた。  それは、二人の暗黙の了解になっていて、お互いに居る場所で望むキャリアを積んでいると未来は信じていた。  付き合って5年。  現場と本社で働く二人の付き合いは、ごく少数の同期しか知らなかった。  未来は、同じ現業の同期の女から「早く結婚した方がいい」と言われた。 アドバイス?をくれた子は彼氏もいなかったので、自分が一番乗りで出世したいのだろうと未来は思った。  親切ぶって余計な口出しをする。ただでさえ、男と戦わないとならないのに、女の敵は女だと思った。  ただ、普通に働いているだけなのに女は面倒臭いと感じた。誰が何と言おうとも、どんな邪魔が入ろうとも、私は私の道を究める。それが、私には出来る。  大丈夫、私には真面目な最強彼氏がいる。
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