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「いつもすみません」と斎藤は、素直に頭を下げる。下げるけれども、同じことを何度もやらかす。僕はプリンターの内部からよれよれになった紙を引っ張り出し手早くプリンターを元に戻した。すると、また印刷が始まった。
書類を見ると社内の案内状だったが、永遠に印刷し続けるほど枚数は要らない。僕は、慌てて斎藤のパソコンを見た。100枚の所が1000枚になってる‼
紙切れが来たら止まるだろう…って、そういう問題じゃない!
僕は慌てて斎藤のパソコンから印刷中止をしてから言った。
「今時、パソコンも満足にできなくて良く大学を卒業できたね」
「う~ん。お陰様で大丈夫でした。アナログに徹してました。手描きの卒論なんて教授から大好評でしたよ。心がこもってるって褒められました」
この女には嫌味も通じない。
見た目から分かる「頭が弱い」雰囲気そのままだ。
斎藤は23歳。新卒だ。大きな目と開き気味のポテッとした唇。小さな顔。華奢な身体。男性社員から大人気の№1だ。すぐに小首を傾げる。いつもぼーっとしているような表情している。ゆるふわの髪の毛が、弱い頭に良くマッチしている。
でも、素直だ。
「鵜川さん、教えてください」と良く言う。良く言うが、教えてもまたやらかす。覚えるのに時間がかかる。この女に真面目に付き合っていると僕は自分の仕事も覚束なくなる。
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