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2、付き合って5年
僕と未来が出会ったのは新入社員研修だ。それから、5年付き合っている。
文系の僕は、理系バリバリの設計技術者の未来の中に、違う世界の人を感じた。
ショートカットにスーツ。甘えの欠片も無い面構えに惚れ惚れした。
未来は一般的な美人とは違う。一重の切れ長の目に小さな唇。平安美人だ。表情が豊かな方ではない。それが照れ隠しだということは距離が近づいて直ぐ分かった。話し方もぶっきら棒にさえ見える。未来には、粘ついた女の厭らしさは微塵も無い。
僕はと言えば、「真面目」だけが取り柄と子供の頃から言われた。
真面目に受験勉強をして、W大に入り、地味な機械メーカーに入社した。僕が勤める会社は歴史が古く、かなり「古い考え」が未だに染みついているような会社だ。その中で未来のような存在は、ある意味、会社が行っている社会に対するアピールの様でもあった。
男女共同参画を行っているという社外的なアピールだ。
未来のような女性技術者が、産休で不利益を食う慣行が無くなったのは、そんなに昔のことではない。
執務職の女性は、出産したら出張も出来ない。だから、配置転換に応じるか辞めるかの選択肢しかなかった。
僕は、未来が結婚してもいいと言ってくれるのを待っていた。彼女にとってキャリアが最優先なのは分かっていた。僕だって未だ年齢的には焦る理由が無い。
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