3、青山 未来

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3、青山 未来

 未来(みく)は、初めて会った時、鵜川翔太がぐいぐい距離を詰めて来たのがウザかった。未来(みく)の人生の中で「男」の優先順位は低い。 未来(みく)は、子供の頃から「超勉強が出来る優等生」と言われてきた。 その評価には満足していた。誰が見たって冴えない自分の容姿は分かっていた。  大人になるまで、男の方から未来(みく)に近寄って来ることもなかった。愛想が無いとか、可愛げが無いと言う言葉を投げかけられ続けていた。  だから、鵜川の態度にも驚いていた。 こんな私の何処がいいの? それは、素朴な疑問だった。でも、どうやら揶揄われている訳でも無さそうだ。5回くらい食事に誘われて、漸くOKした。   鵜川は紳士的で真面目。  それは、1回一緒に食事したら分かった。今時、こんなに真面目な男は珍しいとも思った。付き合ってもいいと思ったが、未来(みく)には恋愛スキルがゼロだった。自分からは誘えないと心の中で悶々としていたら、鵜川の方から言った。 「これからも会ってくれるかな?」 「都合が付けば……」と言うのがやっとだった。  鵜川がリードする形で二人の付き合いは深まっていった。4月に出会って、その年のクリスマスには、鵜川と関係を結んだ。付き合って9か月目の事だった。これも、未来(みく)には鵜川の好感度アップになった。  今時、9カ月もかけるなんて珍しい。  未来(みく)の方は、初めて彼氏ができたことで長年のコンプレックスが癒された気がした。鵜川の事を「翔太」と呼ぶようになった。  
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