女房たちの井戸端話

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女房たちは気まずげに顔を(しか)めたが、すぐに気を持ち直した。 「あっ、そりゃあ汚れ物かい。精が出るやねぇ」 「こっちに寄越しな。うちの子のと一緒に洗ってやるよ」 「そうしなよ。向こうで裏店の餓鬼(がき)どもが遊んでっからよ、あんたも混ぜてもらいな」 されども、声をかけてきた女房たちには見向きもせず、丑丸は持ってきた(たらい)を地べたに置くと、井戸の台板を半分だけ外し釣瓶(つるべ)をするするする…と水の中へ落とした。 釣瓶で水を汲むと、今度はずるっずるっ…と引き上げる。 それから盥の中へ釣瓶の水を張り、しゃがみ込んだかと思えば洗濯板でごしごしと汚れ物を洗い始めた。 「……ほら、(ぬか)だよ。使いな」 一人の女房が丑丸に差し出す。 おいくと云う名のまだ歳若いおなごで、背中に赤子を負ぶって隅の方で洗い物をしていた。
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