女房たちの井戸端話

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「あぁ、丑丸……こないな(ところ)にいたのか」 井戸は裏店の入り口から一番奥まった場処ゆえ滅多に来ない者が姿を現した。 「おめぇんとこの表の油障子を何度叩いても出てこなかったから、どうしちまったかと案じてたところさ」 裏店の家守である茂三だった。 女房連中からどよめきが起こる。丑丸は弾かれたように立ち上がった。 「厄介なことになってな。此処(ここ)まで出張ってきたってわけさ。そういや、前んときからもう六年経っちまってたな……」 『六年』と聞いて、おいくが尋ねた。 「家守さん、もしかすっと……『人別帳』のお改めのことでないかえ」 茂三が渋い顔をして肯いた。
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