父を弔う夜

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日当たり()しくじめじめと湿気(しけ)った裏店(うらだな)(長屋)の片隅で、板間の上に敷かれた薄っぺらい煎餅布団に男が寝かされている。 その(つら)は白い木綿の布っきれに覆われていた。 「……なんだな、まぁ……急なこって、おめぇさんたちもこれから大変(てぇへん)だろうとは思うけどよ」 地主に代わってこの裏店を預かる 家守(やもり)茂三(しげぞう)は、布団の脇で並んで座す死人の女房と(せがれ)に目を向けた。 女房は未だ三十に届かず、倅は(とお)にも満たない。
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