第0章 序章。

1/1
前へ
/6ページ
次へ

第0章 序章。

運命とは…色んな事項の積み重ねで、如何様にも変えられる不規則なもの。 呂后「…それにしても…運命とは皮肉なものではないのかしら?」 時は紀元前180年03月03日、 呂后は肺結核という不治の病を患いながらも…ある場所へと来ていました。 そこは…呂后にとって今は亡き夫である劉邦の建設した王宮・成蕎之宮の裏庭にある桃園でした。 そんな事になっていると知らない成蕎之宮内では呂后を探して…上から下まで色んな身分の女性達が大騒ぎしておりました。 菜都美「陳平様、呂太后様がおいでになられませぬ…。あのようなお身体で一体どちらに…」 菜都美(なつみ)…和名を持つ出自不明の女性で陳平の奥方でもあり夫婦で呂后に仕えていました。 陳平「また…どこに行かれたのか? 菜都美、きっとあそこにいると思いますので自分が見に行きますね…」 陳平(ちんぺい)…貧しい家庭で生まれ育ったものの親に楽をさせたいと思い勉強する事に全ての力を注いだ努力の人で劉邦の軍師でもありました…。 菜都美「お薬をお飲みにならず、 すぐ行方不明になられてしまうので…医師も匙を投げ出してしまうのでございます…。」 そんな陳平と菜都美が 探している人物は… 陳平「それでは治るものも治らないではないではありませんか?」 劉邦の死後、その権力を全てわが物として我が世の春を謳歌していた呂后。 呂后…姓を(りょ)、名を()、字を(がく)と言い劉邦の正室ではありましたが劉邦への狂愛に身を焦がした末に愛を暴走させた女でした。 陳平「桃の華を愛でるよりもするべき事があるはずだと思いますが…」 陳平は頭を抱えながらも軍師としては重病に冒され闘病している人間を放置する事など許される事ではありませんので… 菜都美「裏庭にある桃園で先帝の魂を悼まれておられるのかもしれませんが春先の冷たい空気は身体に毒ですから連れ戻して来て下さいね。」 菜都美の言葉に頷いた陳平は、 裏庭にある桃園へと迎えに行く事にしました。 そもそも軍師である事以前に… 人として許されない行いをしてはならぬと父親から教えを受けていた陳平ではありますが呂后の事を心の中ではそれなりに憎んでおりました。 ちなみに… 菜都美「先帝が心を病で蝕まれてしまったのは…呂太后様のなさった事が原因であると言うのに…」   先帝=恵帝〈=劉盈〉が心を病で蝕まれたその理由は… 呂后「出自不明の女性を寵姫にするなぞ帝として許されるはずがありませぬ!」 紫歩と言う和名を持つ出自不明の女性を寵姫とした事に怒りを覚えた呂后は嫉妬のあまり紫歩の命を奪ってしまったのでございます。 呂后が溺愛?狂愛?していた劉邦が寵姫として迎えていた娘もまた怜實(さとみ)と言う和名を持つ出自不明の女性だったからでございました。 呂后「私の愛する者は和名を持つ出自不明の女性達に奪われてしまう…ならばこちらから先に先手を打つ…。」 恵帝は… 恵帝「母上、 残忍の極みでございまする…!」 自身の母親である呂后の仕打ちに絶望し酒を浴びるように呑み身体を壊した事で若くして命を落としました。 呂后「陛下…。」 無論、 人間としても母親としても呂后のした事は評価出来るものではありません。 唯一評価出来るとするならば… それは… 恵帝を偲んで裏庭に恵帝が大好きな桃の樹を植えて桃園にした事くらいしか思い浮かびませんでした。 それはさておき… 陳平の頭が痛くなる理由を作るだけではなくそれを…深刻なものにする人間は桃園の入り口におりました。 呂后「華は散り逝くが運命(さだめ)ならば私の命も散るが運命なのか…」 桃園はかなり広いのですが… 探しものではなく探し人がやけにあっさり見つかったので陳平は思わず… 安堵のため息をつきました。 呂后「…やけに簡単に見つかったとでも言いたげな雰囲気を漂わせないで貰えるだろうか…?母が今は亡き子の死を悼み悲しむ事くらい許されるであろう…?」 桃の華を眺めるのが好きだった呂后の息子である恵帝は優しくて心が少し弱い人でございました。 陳平「親として先帝を悼むお気持ちが少しでもお有りだと言う事を知る事が出来て安堵しております。」 陳平から嫌味を言われても呂后の顔色は全く変わりませんでした。 呂后「そなたも…和名を持つ出自不明の女性達の命を2人も奪ってしまった私の行為を残忍の極みだと非難するのか…?」 恵帝の死を悲しむ気持ちはあったものの呂后の目から…涙は流れず…顔色もあまり変わりませんでした。 恵帝…劉楹が重病に冒されてすぐ、 死を迎える事となった時、迎えに来たのは…劉邦でございました。 劉邦「…どうして…このような事態が起きてしまったのだ?」 劉邦の知っている呂后は… ここにはいませんでした。 呂后は劉邦が生きている時は、 嫉妬に狂う姿を見せないように 生きていました。 それは… 劉邦から嫌われたくなかったからに 他なりませぬ…。 呂后「私はただ愛されたかっただけ…殿に愛されたいと願う事は罪なのか?妾など妻への裏切りに他ならぬ…」 愛は…2人で育むものだとすれば… これは片恋?それとも狂愛だろうか? 劉邦「恐ろしき女子よ…。 震えが止まらぬわ…」 劉邦に怯えられる程、 誰よりも劉邦を深く愛した女性。 呂后はそれからひと月もしない間、 劉邦と劉盈の後を追い掛けるかのように…その命を落としてしまいました。 陳平「…劉邦様の為に国の在り方をきちんとしておかなければならぬ…」 陳平は妻である菜都美と共に 呂家の人間を粛清しました。 恵帝と柳茜(りゅうせん)の間に産まれた劉恭は少帝恭として即位しておりましたが呂后に逆らった事により毒殺されてしまいました。 4代目の皇帝として即位していたのは 劉弘で少帝弘と呼ばれておりましたが…呂后の死後、呂一族が粛清された事により帝位から降ろされ陳平らにより呂一族の横暴を許した罪により命を奪われる事になりました。 そして… 呂后に命を奪われた怜實(さとみ)がこの世に遺した忘れ形見である劉恒が即位して5代皇帝・文帝となり… 陳平「(ようや)く呂家の支配から漢を守る事が出来ました。」 陳平は菜都美と共に劉邦が奉られている(びょう)で手を合わせながら報告をしました…。 劉邦は高祖と呼ばれる尊い存在ではありましたが…その生家はなんと… 「農家で産まれたら死ぬまで農家。 子々孫々、ずっと農家だ!」 劉邦「嫌だ…!男として産まれたなら頂点に君臨したいんだ…!」 楚の中でも東方に住まう…つまり早い話が田舎に住まう農家の長男坊。 楚の王都で産まれた農家の長男なら 王族に年貢を納める事が出来るので それなりに裕福ではありますが… 田舎に住まう農家では… 「その日暮らす食いぶちを確保するだけで精一杯だと言うのに…この愚か者が…美姫と酒を呑みながら生活されたら一家は滅びるではないか!」 生活をするのがやっとだと言うのに… 家業を継ぎたくない劉邦は… 劉邦「滅びるならそれが我が家の運命ではないのだろうか?」 全く困ったものでございました。 「この愚か者!今すぐ性根を入れ替えてさっさと働け!」
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加