第1章 夢見る農家の長男坊。

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第1章 夢見る農家の長男坊。

紀元前247年に楚で産まれた劉邦が、 秦国の王である嬴政の存在を知ったのは祖国である楚が滅びた紀元前223年の事でございました。 劉邦「男ならば…1度は頂点に君臨したいものだが…」 ちなみに劉邦の産まれた楚では、 項羽の祖父である項燕が秦国との戦いで活躍をしてはおりましたが… 紀元前224年、昌平君との戦いにより討ち死にしましたが昌平君もまた項燕との戦いで討ち死にしました。 しかし… 楚の国では項燕は李信に討たれた事になっており昌平君は楚の国を守る為に王となり秦国との戦いで命を落とした事になっておりました。 歴史書というものは… 時として事実を受け入れられぬ者が内容を改めて書いている場合もあり… 楚の国では昌平君が楚を裏切った事実はないと記載されておりました。 劉邦「項燕なぞ…どちらでも良いし、嘘だらけの歴史書なぞ興味もない…」 今は亡き祖父を誇りに思っている孫の項羽が聞いたら怒り狂って今にも襲いかかって来そうではありますが… 項羽「勉強なんかせずとも良い。 俺は…お祖父様のような大きな存在になるのが夢だ…!」 その項羽はまだ幼く… 項羽の父親と項羽の母親は、 秦国との戦いに巻き込まれて命を落としたため… その養育をしているのは、 項羽の父親の弟で項羽の叔父でもある項梁でございました。 項梁「…勉強しなくてどうするのだ?お祖父様のようになりたいのならば…全ての事を勉強し直さなければなないと常に申しておろうが…!」 項梁が頭を抱えているのは… 項羽の熱しやすく冷めやすいところでございました。 項羽「叔父御、俺は天下を統べる存在になり皆をひれ伏させてやる!お祖父様の血を受け継ぐ俺なら出来るはずだ!秦をいつか必ず滅ぼしてやる!」 それと… 空気を読まず勢いだけで物事を決めるようなところでございました。 項梁「声が高いのよ…。男たるものそのような野望は心の奥底にしまって勉学などに勤しむものよ…」 自分勝手で人の話を聞かない項羽少年に頭を抱えながらも項梁は育ての父としての使命を果たそうと励んでおりましたが… 項羽「叔父御、兵法を教えて欲しい。学問なぞ自分の名前が書けたらそれで良いではありませんか…。」 項梁「…勝手な事ばかり申して… 兵法も学問に通じるところがあるのに何を申しておるのか…全く…!」 9歳の項羽少年が秦への復讐を誓いながらも違った方向へ爆走していたまさにその頃、 項羽「必ずやお祖父様の仇を討ち秦国の王をひれ伏させてやる!」 項梁「声が高いのよ! 人の話を聞かぬか!この愚か者!」 項羽より15年早く産まれて… 24歳となった劉邦はと申しますと… 劉邦「男たるもの、頂点を極めてみたいと思うのは見過ぎた夢だろうか…?なぁ…海音(あまね)、どうだろうか?そなたはどう思う?」 劉邦はその頃、寵愛していた舞姫であり身分は美姫である海音を抱きしめながらそのように問い掛けました。 海音「私は舞姫ですのでその辺りの事は分かりませんが劉邦様は後に大きな事をなさるのではないか?と思うておりまする…」 海音は劉邦と同じ村に産まれた女性だが生家に生活をするための力がなく、金を得る為に舞姫として売られた女性でございました。 但し… 劉邦の家も海音の家の事を言える程の余裕などあるはずもなく… 「農家の長男坊が雲の上のお方に憧れなど持つものではないわ!下らぬ事を申してないで今すぐ働け!」 朝から晩まで寝る間も惜しんで働く劉邦の父親と母親はそんな息子に嫌気が差してしまう程でございました。 そんな状態でございますので、 楚の将軍である項燕も劉邦の家から比べたら…と言うより比べるのも失礼なくらい雲の上にいる存在でした。 しかし… 劉邦は本来派手な事が好きで天候に左右される家業を継ぐのが嫌で嫌で仕方ありませんでした。 劉邦「俺は…こんなところにいるべき男ではないし…天候や気候に左右される因果な家業など継げるか!」 だからこそ…真っ昼間から酒や女性に焦がれてしまったのですが残念ながらその姿は悪い意味で村の評判となり無責任を極めた男と呼ばれていました。 「仕事もせずに女と酒ばかり…。 ロクデナシの馬鹿息子が…!」 劉邦の父親は苦労ばかりかけられ 白髪だらけの頭を抱えていました。 しかし… そんな農家の長男坊に憧れを懐かれている秦王・嬴政にも悩みはありました。 それは… 夢見る農家の長男坊があーだこーだと父親相手に理想を語っている頃から7年前の事にはなりますが… 秦王・嬴政…元の名前は趙政。 秦の国の頂点に君臨する立場である嬴政にも悩みがありました。
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