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それは…
劉邦が秦の王である嬴政の事を知り、
勝手に憧れを懐いていた頃より7年前まで時を遡った西暦239年07月07日。
秦の王都・咸陽では、
その嬴政が怒り狂っておりました。
嬴政「あの愚弟は…
何を考えておるのだろうか?
何がしたいのかつくづく分からぬ。」
嬴政は自身の異母弟である嬴成憍に対してとても腹を立てておりました。
舞彩「そのような事…
仰せになられてはなりませんわ…」
そんな嬴政の事を宥めているのは、
舞彩と言う和名を持つ出自不明の女性で嬴政の第一夫人でした。
嬴政「舞彩はさすがだな…。扶蘇の母であり私の第一夫人でもあるのに…皇后になろうとしない控えめなところも私の愛を深めるところである…」
すると…
王賁「大王、惚気は構わぬのだが…
今はそれどころではないのだが…」
タイミング良く
玉座の間に現れたのは…
舞彩「王賁殿、申し訳ありませぬ。 反乱の芽を摘み取る為、貴方様の力が必要となりまする…」
と、言うより嬴政が呼び出したに他ならないのですが嬴政の代わりに第一夫人である舞彩が言葉を掛けられ…戸惑いの表情を浮かべているのは…王翦の息子で王賁でございます。
王賁「大王、舞彩様。屯留に迎えとは…如何なる事態となられたのだ?王弟たる成憍様が向かわれたのなら俺は必要ないのでは…?」
確かに屯留の地で反乱が起きた際、
嬴政は成憍に兵を預けてこれを鎮圧するよう命じたはずでしたが…
呂不韋「まさか…成憍様が反旗を翻されるなど夢にも思いませんでしたな…。大王、舞彩様。この不手際、如何なさるおつもりでございますか?」
呂不韋…秦の丞相ではありますが…趙姫こと趙蘡…字は峰花と愛人関係にあった事は皆が知るところでございました。
しかし…
舞彩「丞相?疑わしき者からの情報ではないと言えますか?呂不韋陣営の四忠の1人である蔡沢様の庇護した養女・帆乃香様が何かしたのでは?」
舞彩は聡明な女性でありましたので、
蔡沢の養女同様でもある帆乃香の事を秘かに疑っておりました。
蔡沢「疑わしき者から…とはなんですかな?舞彩様、証拠もないのに私が庇護した和名を持った者である帆乃香になんの疑いがあるとおっしゃるのです?」
蔡沢…呂不韋を支える四忠の1人で市場に買い出しへ行った時に倒れていた女性を庇護し…同じ四忠の1人である李斯に嫁がせている。
舞彩「呂不韋丞相を支える忠臣の娘同然の人間と娘婿同然の人間が何故このような時に屯留へ滞在しているのでしょうか?可笑しいのでは?」
舞彩と全く同じ疑いを持ったのが、
王賁でございました。
王賁「…丞相、貴方が全ての企てを企んだのではないのか…?第一成憍殿の第1夫人はそなたの愛人ではないのか?」
成憍の第1夫人もまた和名を持つ出自不明の女性であり実のところ呂不韋の紹介によるものというのが濃厚らしく
疑いを持っているのは舞彩と王賁だけではありませんでした。
呂不韋「なんでそんな話になるのでしょうか?あれは一時期面倒を見ていた舞姫の娘でございます。」
呂不韋は息をするかのように嘘をつくのが得意な人物でございました。
寵姫である趙蘡が荘襄王〈子楚〉から横恋慕された時もフツフツと怒りながらも感情を抑えて笑顔を見せるような男でございました。
とは申しましても…
王賁「羌廆や李信のように女性からそんなに人気がないなら信じられるのだが丞相には…尽きない程たくさんの私財があるから…疑いは拭えない…」
疑わしきは罰せず…とは申しますが、
そもそも呂不韋の場合は見事に真っ黒でございました。
李斯「太后様に関しましては…丞相が若い頃のお話でございまする…。それで疑われては…丞相に対して無礼ではないのだろうか…」
李斯…蔡沢と同じで呂不韋に全忠誠心を捧げる程、尊敬しているので呂不韋の為なら秦王である嬴政とも喧嘩してしまう程でございました。
しかし…
李斯は少し喋り過ぎでございました。
呂不韋「李斯、少し話が過ぎるのではないか?」
唯一の証拠だと胸を張って言える女性が和名を持っているという事に関しては…秦国に和名を持っている女性はたくさんいるため確たる証拠にはなりませんでした。
呂不韋「疑わしきを罰してはなりませんよ?と言いましても私は何も悪い事をしておりませんが…」
呂不韋は自己主張だけすると…
さっさと玉座の間を後にしました。
嬴政「…無駄に頭を抱える事案ばかりで実に頭が重いが…王賁、屯留へ出陣しては貰えるか?李信を伴って…」
嬴政から命令を聞いた王賁ではありますがその顔は複雑そうな顔をしていました。
王賁「李信ですか…?私はアイツとそんなに仲は良くありません。」
王賁と李信は宿敵の関係で…
実のところ、和名を持つ女性達の事でそれなりの悶着を起こしていました。
李信「…失礼な奴だな…。大王に呼ばれたから来たものの…気分が悪くなるんだが…わざとか…?まさか…」
王賁と李信は玉座の間でひと悶着を起こそうとするし…屯留の反乱に関しても頭が痛いし…
そんなこんなで頭を抱えた嬴政が対等に話をする事が出来るほど信頼が出来る人物がいました。それは…
楊端和「…頭が痛い問題ばかりで困っているみたいだな…。秦王・政。」
楊端和…出自は不明ではあるが幼き頃嬴政が趙で暮らしていた時に出逢った幼なじみである。
嬴政「しかし…楊端和よ。あまり私の前で女性の姿をするでない…。」
嬴政も頭を抱えてしまう程、
女性の姿が似合う彼ではあるが…
楊端和「昌平君のように見目がそれなりに麗しいならば男性の姿でも良いかも知れぬが…」
本人は自分の容姿に自信がないようではありますがそれが他人から見るとそんな事はないようで…
昌文君「あまり女性の姿をするのは良くないぞ…。私なぞは変な思い込みをしてしまったではないか?」
嬴政の教育係として幼き頃から傍に付き従っている昌文君でさえ…
嬴政「正室も迎えてない内から愛人をお迎えになられるなど…許されませぬ…!」
楊端和の事を女性であると盛大な勘違いをしていたくらいでした。
楊端和「…嬴政とそんな関係になるなどあり得ん…。」
楊端和の後ろで恥ずかしそうに頬を染めている女性の存在を確認した…嬴政は…
嬴政「楊端和にも愛する存在がいるとは…と、言うか楊端和で良いのか?」
色んな意味で不可思議を極めた友達の事を案じておりました…。
楊端和「…失礼な話だな…。この娘は紫衣華と言う名前らしいのだがそれ以上は俺も知らぬ…」
楊端和から紫衣華と名前を呼ばれた女性は…耳まで真っ赤にしており嬴政も昌文君もどの部分でそんなに恥ずかしがる要素があるのか首を傾げておりました。
嬴政「…楊端和の好きそうな女性ではあるが…我が母のような女性ではなさそうで良かった…。」
嬴政の母親でもある太后は、
恋愛気質で愛こそ全てと言わんばかりに奔放な性格をしていました。
呂不韋「母君を…
悪く言われてはなりませんぞ…?」
呂不韋は趙姫こと趙蘡に対する事になると…どこで聞き耳を立てているのか定かではありませんが…
楊端和「しかし…どこで聞き耳を立てていたのだ…?気配を綺麗に消していたではないか?」
楊端和は空気を読まずに発言をする箇所がいつもありまして…
嬴政「少しは空気を読まぬか?紫衣華、楊端和を暫しの間、どこかへ連れ出しては貰えぬだろうか…?」
嬴政と昌文君の代わりに鋭い指摘をいつもしてしまいますので…
呂不韋「お友達に関しては吟味して頂かなければ…なりませんぞ…!」
嬴政「友は吟味するものではない。
趙で母と共に…孤独を感じていたあの日、楊端和だけが変わらず話をしてくれた…。」
そんな楊端和の隣に寄り添うのは…
紫衣華「楊端和様はこのままで…いつもと変わらぬ態度でいて下されば…我らはどこまでも付き従います…」
出自不明ではあるものの…
楊端和を誰より大切に想う女性で…
羌廆「楊端和のどこが良い?俺の方がそなたを幸せに出来るとは想わぬか?」
桓騎、楊端和と同僚である羌廆からちょっかいを出されても…
紫衣華「楊端和様以外と連れ添うつもりは皆無にございます。」
はっきり拒むくらい楊端和の事を愛している紫衣華の事を見つめながら羌廆は…
羌廆「俺は…どうも女っ気が足りないようだと李信からも心配されていて…ちょっと迷惑している…」
女っ気が極めて少ない…と言うより
宮女達からもそっぽを向かれてしまうくらい人気がない李信から…
李信「羌廆には女っ気が極めて少ないような気がして心配なのだが…」
などと心配されてしまい…
どうやら機嫌を損ねているようで…
羌廆「誰が…女っ気がないなどと…
基本的に…腹が立つ!」
しかし…
李信は既に和名を持っている出自不明の妻を秘かに娶っておりました。
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