0人が本棚に入れています
本棚に追加
Act1. 危篤
人工呼吸器をはじめ、色々な生命維持管理装置に繋がれて、ユウマ隊員は昏睡状態が続いていた。
制服姿の男がひとり、ガラス張りの集中治療室をのぞき込んで立っている。
「ユウマ君、絶対に戻ってきてください」
男は、険しい表情でつぶやいた。
「キリシマ隊長、やはりこちらでしたか」
キリシマが振り返るとレナ隊員が立っていた。
「ドクターに聞きました。今晩が山だと……」
「私の責任だ。限界が来ていたのはわかっていたのに彼を止められなかった……君たち二人がいずれ」
「隊長に責任はありません……ジオルトですから、ユウマは。いつかこうなる覚悟はできていました」
「知っていたのですか?」
「現場でユウマが時々いなくなるのが心配で、ある時、後を追ったら変身するところを見てしまい……ショックでした。しばらくの間、私はユウマに当たり散らしていたと思います」
レナは哀しげに微笑んだ。
「上層部でも一部の人間しか知らない機密事項です。私は直属の上司なので知らされていましたが、隊でも他に知る人はいません。ユウマ君も口外できないストレスがあったと思います」
「ユウマは、よく隊長のことを話していました。愚痴でも何でも聞いてくれて、どんな相談でも親身になって答えてくれる。だからジオルトを続けてこられたって」
「──なのに私は、彼の出撃を止められませんでした。力ずくでも止めるべきだったのに。隊長としての責任や上からの圧力、SNSの非難、そんなことに負けたのです。こうなることはわかっていたのに……」
最初のコメントを投稿しよう!