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Act3. 限界
キリシマとレナは、ガラス壁越しにユウマ隊員を見守っていた。今晩だけは怪獣が現れないことを祈りなから。
「隊長、これまでジオルトを終えた人たちが、その後何をされているかご存知ですか?」
キリシマはすぐには答えられなかった。
「──ジオルトの正体は明かされませんから、正確なところはわかりません。あくまでも噂ですが、4代目ジオルトジャックは我々と同じ防衛隊員で、継続して任官してるそうです。依然リハビリ中との話もありますが」
「そうですか……」
「ユウマ君から聞いているかもしれませんが、ジオルトは、テレビのヒーローの様な異星人と融合した超人ではありません。短時間巨大化して特殊能力が使える、ただの人間です。激しい戦闘が続けば、肉体的にも精神的にもダメージが蓄積されていく──」
「ユウマは人一倍真面目で優し過ぎる性格でしたから、一人でも被災者を減らせたらと、それこそネットの誹謗中傷にまで目を通していました」
「SNSを見るのはやめるように、何度も注意したのですが」
キリシマは苦笑した。
EICOTとジオルトは、事あるごとにマスコミやネットで非難されてきた。
今日も宇宙怪獣との共存を主張する団体が、このEICOTの基地周辺でデモを行い、SNSでは先月の怪獣事案への対応について大炎上が続いていた。
「私たちはただ、一人でも多くの人を助けたくて戦っているだけなのに…」
レナの強く握られた拳が怒りで震えていた。
「市街地で巨大化して怪獣と戦うユウマ君のストレスは、日に日に溜まっていました……そこに先月の件で、負傷もありましたが、あれ以来1日中塞ぎ込むようになってしまった」
「子供が亡くなったのはあなたのせいではないと、何度言ってもだめでした。自分が決着をつけると言うばかりで、ユウマは完全に心を閉ざしていました」
レナは悲しげに集中治療室の中を見つめていた。
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