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ロッテンハイムが目を閉じ深呼吸をした。両手に氷を纏いはじめた。光が反射してキラキラと輝いている。氷が剣に広がり、剣身が長く鋭い氷のロングロードになった。ワオッ。あれはちょっとやばいかも。切れ味も鋭そうだ。当たったらアウトだ。左手は薄く氷を纏ったままだ。何かあるだろうな。
「では、改めて。はじめ!」
ザックバード騎士団長の声が響く。ロッテンハイムが華麗でリズミカルなフットワークをその場で何度か踏み、フェンシングのような素早いステップと突きを何度か放った。シュバ、シュバ、シュバ。空気を切り裂く音が鋭く響き渡る。
オレは後ろに飛ぶように距離を取った。その時、ロッテンハイムが左の氷で覆った手を何かを投げるように開いた。小さな鋭い氷が散弾となって足元へ飛んでくる。オレは思いっきりジャンプして避けた。そこを狙っていたかのように、ロッテンハイムの鋭い突きが襲い掛かる。まずい!
オレは一か八か足を大きく上げる。ロッテンハイムの突きが足のすれすれと通過した。よし!刃は横を向いている。両足で剣身を踏むように全力で蹴った。氷が砕けキラキラと輝きながら散った。剣を踏まれた形になったロッテンハイムが前かがみに倒れ込んでくる。それに合わせ剣を振った。
「そこまで!」
「やった、やった……ぞ」
オレは全身の力が抜けたようにその場に座り込んだ。怪我もありロッテンハイムも強く負けてしまうかと思った。でも負けたくはないのだ。ギフトを持たず生まれてきて、ずっとずっと何者かになりたいという気持ちで鍛え続けてきた。しかし鍛えても鍛えても、目に見える結果は現れない。何やっても無駄なんじゃないかと、不安にかられる日もあった。それが今、一つ報われたのだ。
ロッテンハイムが近寄り手を差し出す。その手をしっかりと握り立ち上がった。
「完敗だ。ギフトを使っても勝てないとはな」
「ギリギリだったよ。忘れてて悪かったな。またやろう」
握った手はいつしか握手へ変わり、健闘を称え合った。
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