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猛獣の表情が変わる。はじめて見る焦りの表情。猛獣に向かって、剣に纏う風を放った。すごい力だ。ギフトもこんな感じなのだろうか。猛獣は何もできず羽で体全体を包み防御する。小さな傷が羽にどんどん増えていく。
「貴様!これ以上好きにはさせん」
低く響く声が強い怒りを感じさせる。風の力は徐々に弱くなり遂に止んだ。永遠に出し続けられるわけではないようだ。風が止み、猛獣は羽と両腕を大きく広げた。拳から鋭く長い爪が伸びている。来るか!?
「これで終わりだ。消えてもらう」
耐えるしかない!剣を真っすぐ構え精神を集中させる。猛獣が羽をはばたかせ空高く飛び、巨体が猛スピードで向かってくる。その勢いのまま腕を振りかぶり拳の爪で襲い掛かったきた。剣で受けるため歯を食いしばり思いっきり剣を振り抜く。
ガッキーン!
爪と剣が当たる音が夜の闇の中に響き渡る。体が宙に浮き、数メートル後ろに吹き飛ばされた。猛獣がゆっくりと近づいてくる。やばい……
「最後に教えてくれ。あんたは何者だ?なぜここにいる?」
「教える必要はない。さらばだ」
猛獣が腕を高く上げた。月の光で逆光になり、黒の体から光を発しているように見えた。闇と光のコントラストが現実と夢の狭間を思わせる。掲げた腕を振り下ろす。ここまでか……。覚悟し目を閉じた。
ガキン!何かがぶつかる音がした。
……なんともない。どうやら生きているようだ。そっと目を開ける。振り下ろした爪を銀に輝くロングソードが止めている。
「お待ちください!ゾグー様」
「誰だ!邪魔をするやつは」
声の方を向くと全身銀色に輝く鎧が見えた。もしや!?
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