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さてと、今日はこれからが本番だ。この森の奥、小高い丘の上に大きな岩が刺さるように埋まっている。そこに魔物が出たという噂をゲート騎士団の研修の時に耳に挟んだ。そこに3人で行ってみようと決めたんだ。3人でこうして夜会えるのもあと少ししかない。最後に忘れられないような思い出をつくりたいんだ。
「よし!そろそろ行こうぜ」
「ほんとに魔物なんているのか?」
カイトが冷笑する。疑心暗鬼な気持ちと期待感が表情に表れている。
「いるわけないでしょ。どうしても行くっていうなら付き合ってあげるけど」
ランは完全にいるわけないと決めつけて呆れている。少しぐらい期待した方が楽しいと思うんだけどな。でも案外楽しんでたりして。
「とにかく行ってみようぜ。あの岩みるだけでも価値はあるさ」
目的の場所へは少し険しい道を通らざる得ない。深い闇の中、ランが前にかざした手から発する光を頼りに進む。闇は光を吸収し、視界は前方数メートルしかない。上を見上げると木の合間から見える空が月明かりのおかげで少し明るい。月の光のおかげで、闇の世界ではなく、現実の世界にいることを認識し、前へ進むことができる。
「見えた!丘の頂上だ」
3人の足取りが軽くなる。頂上の平地へとたどり着いた。中央に大きな岩が一つ。5人ぐらいは乗れそうな大きさだ。この岩は前の戦いで魔物が投げ突き刺さったものだという伝説がある。そんな桁外れの力を持つ魔物がいるなんて信じられない。何しろ魔物を見たことすらないのだ。魔物と人間が争い戦ったのは、もう700年も昔。戦いは人間が勝利した。しかし魔物は数が多くて、駆逐するのは無理だと判断し対話を求め、結果共存することを選んだ。人間と魔物を住む場所ははっきりと分け、お互い干渉しないとになった。人間の街は大きな城壁「ゲート」で囲んであり、ゲートの中には、魔物が入ることは一切できない。だから17年間一度も魔物を見たことないし、街のほとんどの人が魔物を見たことがない。だが稀に魔物が迷い込み、それをゲート騎士団が倒しているという噂もある。あながちただの噂とも言い切れない。ゲート騎士団の研修で魔物の特徴や弱点を書いた「魔物図解」を学んでいる。その魔物図解には数百以上の魔物の特徴から弱点まで記されている。ここまでの書が書けるのは実際に見て、戦った証かもしれない。もちろんオレも穴があくほど読んでいる。魔物が出ても負ける気がしない。
カイトが注意深く周囲を見渡す。
「魔物なんていないね。やっぱいるわけないか」
カイトが少し残念そうに月を見上げる。ランが岩の上によじ登り座る。ランの光がなくても月明かりで明るい。オレとカイトも岩に登り並んで座った。大きな月と無数の星の光がいっぱいに広がっている。手を伸ばせば掴めそうだ。
「もうすぐ学校も卒業だね。いよいよ本格的にロールがはじまる。時間も合わなくなるし、夜こうやって3人そろうのは難しいかな」
ランが空を見上げたまま、ささやくように言った。
「そうだね。僕は火のギフトを使った発電のロール。大切な電気を作れるなんて光栄だよ」
「私は、農業プラントで作物に光を与える。街の食べ物が栄養たっぷりになるんだって。みんなのためになれるなんて幸せ」
「オレは、ゲート騎士団。憧れた剣士に近づけた。毎日体を鍛えて、剣術の稽古をした努力が報われて嬉しいよ」
3人で並んで月を見ていた。満月だった。温かい光がオレらを包んだ。
ゴゴ、ゴゴゴ。
「あれ?なんか揺れてない?地震?」
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