第2話

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第2話

 まどろみの中、光が近づいてきた。朝だ。目を開けると太陽の香りを感じる。ベッドから体を起こす。と、アバラに激痛が走った。痛みが昨日の出来事が現実だったことを物語る。そして夢の中でも戦っていたのを断片的に思い出した。魔物がいたという高揚と畏れ、そしてあの剣の切れ味。忘れられず夢にも出てきていた。手に力が入る。い、いたたたっ!やばい。相当痛む。これは病院に行かされるな……。トイレに行きたくないが、もう漏れそう。アバラを押さえ、慎重かつ急ぎでトイレへ向かった。 「バイタルエラー。病院へ行ってください。病院への連絡、学校への欠席届を送信しました」 やっぱりごまかせないか。トイレの中で「マザー」が警告を出した。家の中の数か所に端末があり、あらゆる場面でマザーからの報告が届く。マザーは昔「光の神」と呼ばれていて、すべての国民を常に光を照らし見守ってくれているのだ。 それにしても病院はやばいな。この怪我、病院の先生にどう説明したものか。母さんにも説明しないといけないだろう。母さんは料理のロールに行っていて、すでに家にいない。それだけが救いだ。  ピンポーン。家のベルがなる。スコットじいが来たようだ。電馬車の運転手のスコット。面倒見がいいおじいちゃんのような存在で親しみを持ってスコットじいと呼んでいる。動けない時の病院への移動や料理の配達など電動の馬車を運転してくれるのだ。 「よう。悪ガキ。怪我したみたいだな。そろそろロールもはじまるんだろ。あんまり無茶はすんなよ。ほらよ。パンだ。食えるか?すぐに行くから、はやく乗りな」 「おっ!コロッケパンにやきそばパン!さすがスコットじい。オレの食べたいものが分かってるー」 「ははは。当たり前だろ。お前が生まれた時から乗せてるんだぞ」 くしゃくしゃの笑顔を見せる。口は悪いけど、優しくて憎めない。電馬車の運転手は、スコットじいにぴったりのロールだ。マザーは性格までもお見通しなんだろうか。 パンをかじりながら家を出るとランの声が聞こえた。 「おはよう!ファルマー。学校行こ!」 電動ボードで髪をなびかせながら手を振っている。 「おはよう。悪い、病院行ってくるよ」 ランの口が「あっ」という形になる。電動ボードが家の前で止まった。何か言いたそうで口を開けたが、口を強く閉じ、笑みを見せた。 「お大事に。学校が終わったらカイトとお見舞いにくるね。じゃあまた」 「別に来なくていいよ。大した事ないから」 走り去るランの背中に声をかける。ランはこちらを見ずに手だけを振った。 「こりゃはやく病院行って、治療してもらわなきゃな」 スコットじいが、からかうような笑顔を見せ電馬車へと乗り込む。オレは空を見上げた。朝日は昇ったばかりだ。大きく息を吐き、力を込めて一歩を踏み出した。
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