テスパ ~テストパフォーマンス~

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 そんな一方的に見下していた自覚さえあった加藤に定期テストで勝負を挑まれたのは突然の出来事だった。 「なぁ委員長。次のテスト、勝負しねぇ?」  俺一応学年一位なんだけど。学年順位は公表されているものではないが、それとなく頭の良い奴なんてクラスメイトは把握するものだ。その逆も然り。コイツ、この前のテストの点数、五教科で90点とか言ってなかったか?仲間内でゲラゲラ下品に笑いながら騒いでいたのが聞こえていた気がする。どうしてこんなに自信満々で俺に挑んでくるのか……怪しい。 「何企んでんの?」 「えぇ?人聞きが悪ぃなぁ。今度の社会、自信あんだよ。勝負しようぜ。もしかして自信ねぇの?」  挑発するようなことを言ってきやがる。しかも社会だけ。何故か。皆目見当が付かない。しかしそれを悟られるは癪だった。 「勝ったら何してくれんの?」 「お、勝つ前提?いいねぇ、勝ったら何でもしてやるよ」 「……別に加藤にして欲しいことなんてないよ」 「冷てぇなぁ。じゃあ勝った時のご褒美は俺が考えといてやるよ。意味ねぇけどな。そんでさぁ、俺が勝ったら聞いて欲しいお願いがあんだけど」 「何」 「ヒ・ミ・ツ!」  語尾にハートでも付きそうな気色悪い言い方をしながら、人差し指で俺のおでこに触れようとしてきたから腕を振って逃れた。 「教えろよ」 「勝つ自信あんだろ?じゃあ聞く必要ねぇよな?」  先ほどから揺るがない自信を見せている加藤を不気味に感じたけれど、ここで逃げたら後で何を言われるか。それにカンニングをしたとしても俺に勝てるわけでもない。何故なら俺の席は教室の一番後ろの席で、コイツは一番前だ。俺がこのクラスで一番の点数を取れば、コイツが隣のヤツの回答を見た所で俺の点数を超えられることはないだろう。 「……わかったよ」 「よーし!直前で逃げんなよ!」  そうして流されるがまま、加藤と社会だけの定期テスト対決が行われたのだった。
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