テスパ ~テストパフォーマンス~

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 テスト返却日。普段とどこか様子が違い、やけにご機嫌な社会科担当教師の武田を見て嫌な予感がした。いつもなら無表情のまま淡々と名前を読み上げテストを返却していくのに、教壇に立つなり笑顔でこう切り出した。 「皆聞いてくれ!今回のテスト、誰が最高得点だったと思う?」  嫌な予感が当たったと、答えを聞く前に分かってしまった。心拍数が急激に上がっていく感覚がした。エアコンが効いている教室だというのに、嫌な汗が背中を流れる。 「なんとあの加藤だ!よく頑張ったなぁ!」 「ちょ、ちょっと止めてくださいよぉ!恥ずかしいじゃないですかぁ!」  武田はお調子者の加藤なら名前を晒しても問題ないと思ったのだろう。案の定加藤は調子に乗ってスキップしながらテスト用紙を受け取り、教室にいる全員に点数が分かるように見せびらかしながら席へと戻って行った。満点を表す縦の棒と丸が二つ並んだ数字が見えて、教室のいたる所でざわつき、また加藤と仲が良い奴らは便乗して加藤と一緒にはしゃいでいた。 「おいおい騒ぐな騒ぐな。ほら名前呼んでくぞ――」  その後自分の名前が呼ばれても、少し反応が遅れてしまった。高得点の自信はあったが、満点を取る自信はなかった。予想通り俺の点数は98点で、いつもなら十分な点数だったのに、何の感情も湧かなかったのは初めてだった。 「ふははははっ!俺の勝ちだな!どうしたぁ?委員長さんよぉお⁉」  放課後。教室に残るよう加藤に言われて覇気のない俺は大人しく従った。社会の授業が終わってからというものの、コイツはずっとにやけ顔でこちらを眺め続けていた。 「どんな手を使った?」 「んんん?山を張ったら大当たり!俺今宝くじ勝ったら一等当たるかもなぁ!」 「そんなわけないだろ……」  おどけながら加藤が煽ってくる。屈辱的だった。こんなに屈辱的なことは初めてかもしれない。拳を固く握りしめ、奥歯が欠けるんじゃないかってくらい、強く歯を噛みしめていた。 「そんなわけないって思う?……そのとぉーり!さっすが委員長!」 「え?」 「察しの通り、からくりがあんだよ」 「……は?」  突然加藤の顔つきが真剣なものに変わり、意表を突かれた俺は間抜けな声が漏れてしまった。 「知りたい?」  俺は黙って頷いた。加藤は俺が頷いたのを見ると満足気な顔に代わり、そして教室の外へと歩き出してしまった。 「どこ行くんだよ」 「だぁーまって来いや」    本当に一々だらしない話し方が鼻につく奴だ。しかし今はついて行きたい理由が出来てしまった。仕方なく黙って加藤の後をついて行った。
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