1 どさくさ

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1 どさくさ

 男子生徒数名。雑談をしている。 「勇介。おまえんち、可奈んちのとなりだってな」  勇介はぶっきらぼうに答える。 「ああ。あんな奴がとなりで、ツイてないよ」 「ブスだもんな」 「ブスブス」勇介は言った。「中学まで、しかもおなじクラスとは、おれもまったくツイてない」 「わはははは」 「勇介、ご愁傷さま」 「わはははは」  勇介は舌打ちする。 「ちぇっ」 「わはははは」 「わはははは」  休み時間。  男子生徒たちは、座っている可奈を取り囲む。 「可奈ちゃああん。暗いねえ」 「可奈ちゃん。どうしてそんなご面相なの」 「バイ菌みたい」 「へへっ。泣け泣け」  可奈は、ワッと泣き出す。  笑う男子生徒たち。 「可奈ちゃああん。金、欲しいんだけど」 「そうそう。少し融通してくんない」 「それぐらいしか君、役立てないでしょ」  ひどいもの。だが、クラスの皆は誰も助けない。 「明日持ってきてねえ」 「持ってこないとひどいぞ」 「二千円ぐらいでいいからさあ」 「持ってこないとーーどうしちゃおうかなあ」  勇介が言った。 「そうだ。可奈。絶対持ってこい。持ってこないとなあーーパンティープレゼントだかんな!」
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