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「……ごめん、ほんと、私の気持ちばっかり押し付けて、振り回して……」
「謝って欲しいわけじゃないって言ってるんだけどなぁ」
「……うん。でもなんか、ごめんって言うしか思い浮かばなくて……」
どんどん弱々しくなっていく由莉の言葉は、目の前で落とされた大きな溜息に掻き消された。
あー、とか、うーとか小さく唸ったあと、泣きそうな顔をして凪が由莉の方に視線を向ける。
「他のアルファを想って謝られるの、本当に結構キツいんだよ。……番に捨てられたら、君も同じくらい苦しんでくれるのかな」
「え……」
どういう意味かを訊ねる前に、由莉の後頭部に凪の手が触れる。
耳元に唇が寄せられ、直接耳の中に吹き込むようにして「い ら な い」とゆっくり言葉が落とされた。
「は……? ……っ」
たったそれだけの、短い一言。
時間にしたら数秒にも満たないその一言が吐き出された瞬間、ゾワリと由莉の全身に悪寒が走る。
「……うん。せめて一生かけて僕のこと恨んでよ」
それだけ言われて距離が空き、微かに震えてしまう両手をぎゅっと握る。
恨むとかそんなつもりは全くないけれど、凪くんの言った意味はなんとなく分かった。
誰とも番になれずにこれから生きていくのって、確かに一生かけて呪われているみたいだ。
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