オメガ

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 色々言われることはあるけど、指導してくれる先輩は優しいし頼もしい。私の噂を知ってからも態度を変えず仕事を教えてくれて、新人が働きやすいようにと考え、フォローしてくれる。  それだけでも、本当に幸いだった。  周りから好奇の目で見られても、一人頼れる人がいるだけで精神的には大分楽だ。 「……仕事、頑張らなきゃ」  せめて業務的なことくらい、迷惑をかけないようにしたい。  小さく呟いて気合いを入れ直し、姿勢を正して前を見た。  今日の仕事が終わったら、由莉はしばらく連休に入る。  社会人になってから、そして、婚約者ができてから初めてのヒートが近付いているのだ。  約束通り、明日からヒートが終わるまでの期間、由莉は東条の家に泊まることになっていた。  抑制剤に頼らないヒートは初めてで、自分がどうなるのか分からない。  それでも、東条のことを信用しているし、ちゃんと番になりたいと思う。  初めての不安を打ち消すようにして、今は仕事のことだけを考えるように努めた。
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