オメガ

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 初めてのヒートまでの期間、由莉が東条と食事をした回数は七回だ。  食事をして話すだけの日もあれば、そのあと少し買い物をして帰ったり、軽くドライブしたこともあった。  初対面でお寿司を食べた時よりは距離が縮まっていると思うし、少しずつだが相手のことを知っていき、順調に関係が築けていると思う。  それでも、彼の家に入るのはまた別だ。初めて来るわけだし、どうしても緊張してしまう。  これからする事を考えると尚のこと、本当に私で大丈夫なんだろうかという不安だけがどんどん募っていった。  数日分の泊まりの荷物を持ってくる予定だったが、どうせ今後も定期的に来る事になるんだからと、必要なものはある程度東条が用意してくれた。  そうなると必要なものは殆ど無くて、由莉の荷物は大きめのトートバッグひとつだけである。 「どうぞ、入って」 「お邪魔します……」  20階建てマンションの、18階にある東条の部屋。良い所に住んでいるんだろうなと予想はしていたけど、入ってみるまでその広さなんて分からなかった。
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