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一人で暮らすには明らかに広そうだけど、お金に余裕がある人はこういう所に住むのが普通なんだろうか。
私だったら部屋を持て余してしまいそうだけど。
「君の部屋用意してるから、とりあえずそっちに荷物置いてきな」
「え、私の部屋?!」
「何驚いてるの? 必要でしょ。ヒートじゃない時に一緒に寝るわけにもいかないし」
部屋も余ってたからと説明してくれたけど、わざわざそこまで用意してくれたなんて聞いてない。
置かれているベッドは使った形跡がないし、明らかに新品だ。
セックスするなら一緒に寝るものかと思っていたけど、どうやら違うらしい。
そのことに、由莉は少しだけ不安を覚えた。
確かに、まだ出会って一ヶ月しか経っていない。
一応婚約者という立場だし、デートのようなことを何度か重ねてきた。
だけどその中でキスやハグといった接触はなかったし、どちらかが好きだと伝えたわけでもない。
この場合、私達の関係ってどういうものなんだろう。
婚約者で運命の番。それは間違いではないけれど、恋人だと称されるような甘い関係ではない気がする。
ヒートを迎えてセックスしたら、何か変わったりするのだろうか。
優しくて、かっこよくて、不意に見せてくれる微笑んだ顔が可愛くて、胸がぎゅうっと締め付けられているような感覚になる時がある。
これを恋と呼んでいいのかは分からないけれど、間違いなく私は東条さんに惹かれているのだ。
東条さんの方は……どう思っているんだろう。
好きじゃなくても、ヒート中のオメガのフェロモンで誘惑されたら、セックスくらい出来るのだろうか。
私のことを好きですかと聞く勇気はまだ出ない。
それでも、今回のヒートが終わったらちゃんと確認しよう。
セックスしてみてどうでしたかって、私は番として気に入ってもらえますかって。東条さんの気持ちが、ちゃんと知りたいから。
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