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「お、おねがいします、ほしい……」
「……っ、あー……ごめん、ちょっと無理、かも。少し……すぐ戻る。待ってて」
「え……」
熱に浮かされているとはいえ、勇気を出して誘ったつもりだった。
絶対に応えてもらえるものだと思っていた。
それなのに東条は一旦部屋から出て行き、戻ってきたと思ったら、手に持っていた革の首輪を由莉の首へ装着する。
「これ、ちゃんとしたカラー用意しておいたから。つけて」
「へ……」
「今は処方されたシール貼ってるだけだろ? それじゃ駄目だ」
本気で、意味が分からない。
今はシールで項を隠してはいるが、それだってヒートになったら外すつもりだった。
カラーなんて、ヒートが近付いた時やアルファが多い場所に行く時に、オメガが念の為にと着けるものだ。
今から番になろうとする行為の最中に、わざわざ着けるものではない。
「か……噛まない、の?」
今日、東条さんの番になれるのだと思っていた。
ヒート中にセックスして、項を噛まれて、それで正式な番にしてもらえるのだと思っていた。
どうしてこんな物を用意しているの。
「……は、そんな簡単に許しちゃ駄目だろ」
その言葉に、さっきまで欲に塗れていた脳がぐらりと揺れた。
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