初めてのヒート

10/15
前へ
/113ページ
次へ
 久しぶりの飢えた感覚のない目覚めに、ようやくヒートが終わったのだと、由莉はほっと息を吐いた。  結局、東条が服を脱ぐことも、由莉の項を噛むこともなく終わったヒート期間。  ただ痴態を晒して迷惑をかけただけの四日間のことを、由莉は早く謝りたかった。  こんなことをしても、なんのお礼にもならないかもしれない。それでも、せめて今の自分に出来ることをしようと、由莉はベッドから足を降ろす。  昨日まで酷使していたせいで、本当はまだ身体が重たい。  だけどヒートが終わった後まで東条に甘え、疲れているからなんて言い訳をして世話を任せるわけにはいかなかった。  ベッドから全てのシーツを外し、使っていたタオル類もまとめて抱える。  勝手に使って申し訳ないけれど、これくらいはいいだろう。そんな言い訳を頭の中で並べ、持っていた物をまとめて洗濯機に放り込んでボタンを押した。  お風呂に連れて行って貰うときに、洗濯機の場所を確認しておいてよかったと心底思う。  洗濯機はどこにありますかと質問するためだけに、東条を起こすのは申し訳ない。    リビングやキッチンも、食事をする時に何度か足を踏み入れたし、入室が禁止されている場所ではないので入っていいだろう。  ヒート中は料理する時間も体力もあまり無かった為、そのまま食べられるパンやゼリー飲料、果物なんかが主な食事だった。  きっと、二人で調理して食事をするつもりで東条は用意していたのだろう。冷蔵庫の中には、買ったまま開封されていない食材がいくつも入っていた。
/113ページ

最初のコメントを投稿しよう!

150人が本棚に入れています
本棚に追加