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ピーピーと洗濯機が仕事を終えた事を知らせ、シーツを干しに行こうとソファから立ち上がる。
両手にシーツやタオルを抱えながら脱衣所から出たタイミング、急に目の前に立ち塞がった人影に、由莉は思わず足を止めた。
「お……はようございます?」
「いきなりこんなことして、身体平気なの?」
この家の中にいる人物なんて、自分を除けば東条しかいない。
おはようの挨拶も返されず、呆れたように顔を歪めた東条に、由莉は無意識の内に一歩後退る。
「ヒート終わったみたいで……もう大丈夫です」
「そう。それならいいけど」
言うと同時に腕の中にあった洗濯物を丸ごと奪われ、そのまま去ろうとする東条を慌てて追いかける。
「あああ、あの、いいですほんと、自分でするので」
「キッチンにご飯まで用意してあったし、急にそんな色々しなくていいよ。君のヒート中にやってたの俺だし」
だから、少しでもその期間の分を挽回するためにやりたいのに。
色々と言ったが結局洗濯は任せてもらえず、由莉が東条を手伝う形で二人で干すことになった。
全て終えてからリビングに向かい、先ほど用意したばかりの食事をテーブルに並べて席に着く。
こうやって向かい合って食事をするのは、ヒートに入る前日以来だ。
ヒート中は行儀悪くベッドでゼリー飲料を飲んだり、ソファで東条に凭れ掛かりながら果物を食べさせてもらっていた。食事の仕方が完全にペットの犬である。
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