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「……あのさ、君って俺の婚約者なんだよ。放っておいて、万が一でも他の奴の前でああなったらどうするの?」
痴態を晒すなと、そう言っているのだろう。
まだ番ではないけれど、仮にも私は東条さんの婚約者だ。
あんな姿を誰かに晒したら、そのまま私の恥が東条さんの恥になる可能性がある。
「ちゃんと気を付けるし……迷惑、かけないようにします」
「迷惑なんて俺は一言も言ってないけど?」
「今回のヒートで、東条さんの番になれないって分かりましたし、婚約も東条さんの好きにしてくださって構いませんから……」
「は? 何言ってるの?」
東条さんが好きだから、迷惑になるようなことはしたくない。
婚約だって、番になりたくもないオメガなんかとする必要はないのだ。
私と結婚したところで、東條ホールディングスに利益があるわけでもない。
私はオメガっていう特徴があるだけで、家柄が良い訳でもないのだから。
東条さんだって、好きでもないオメガと結婚するのは苦痛だろう。
「私は、ただオメガってだけで……」
「そうだよ。君は俺だけのオメガで俺の番。だから無いだろ、手放すなんて選択肢」
「……っ」
オメガは希少、優秀な子供を産める胎。
だからきっと、珍しいオメガをただ手放すのは惜しい。
だけど私に対して良い感情を持っていないから、そう簡単に結婚や番という契約を結びたくはないのだろう。
一度番にしてしまったら、色々と面倒が付き纏う。
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