婚姻関係

8/12
前へ
/113ページ
次へ
「……今回は三日か」  疼きがない目覚めに、今回も無事にヒートが終わったことを悟った。  ベッドから上体を起こして日付と時間を確認すると、スマートフォンの画面には5月13日の午前9時17分と表示されている。 「少し、寝すぎたかな……」  独り言が部屋に響き、そのまま虚しく消えていく。  ヒート中にいくら勘違いしそうになっても、デートの時に優しくされてどれだけ期待しても、この瞬間に「やっぱり私は恋人とは思ってもらえてないんだな」と答え合わせをしている気分になる。  ヒートが終わった朝に、一緒のベッドで目覚めたことなんて一度もない。  私が気を失ったら後処理だけ済ませ、東条さんは必ず自室に戻って一人で眠る。  ピロートークとか一緒に寝るとか、そういう接触は一切ないのだ。果たすべき役割を終えたら即座に距離を置かれるのだから、それが答えなのだろう。  ただでさえ不快な事に付き合わせているのだから、ちゃんと自覚を持たなければいけない。これだけしてくれるのだから十分だって思った気持ちを忘れないようにしないと、都合のいい考えに流されそうになってしまう。  私の好意は迷惑でしかないんだって、自覚しろ。  虚しいとか悲しいって気持ちが消えるわけではないけれど、この気持ちとうまく付き合っていかないと終わりが早まるだけなんだから。
/113ページ

最初のコメントを投稿しよう!

150人が本棚に入れています
本棚に追加