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「ごめんなさい。色々嬉しかったんですけど、なんか……今日は、一人で帰りたいです」
「……うん。そっか、分かった。気をつけて帰って」
そこからどういう会話をしたのか自分でも分からないまま、逃げるように東条の家を出て由莉は早足で駅に向かう。
少し強めに風が当たるのが、熱くなった頭を冷やすのにちょうどよかった。
早く家に帰って、一人で反省会しよう。
そんな思いで道を進んでいる中、後ろから不意に腕を掴まれ思わず足が止まった。
腕を引かれた方を振り向くと、立っていたのは由莉と同じ歳くらいの、柔らかい空気を纏う男性だった。
「……え」
「久しぶり、由莉ちゃん」
知らない男に名前を呼ばれ、知り合いだろうかと記憶を辿る。
人違いの可能性も考えて名前を訊ねようとした瞬間、目の前の男が由莉より先に声を出した。
「ねぇ、僕のこと覚えてる?」
覚えなんてないし、知らない人だ。
だけど、少し声を聞いただけなのに、肌で感じて分かってしまう。
……どうしよう。アルファだ、この人。
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