運命じゃない人

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 別々にシャワーを浴びて、着替えて、そのまま凪の車で家まで送ってもらって一人で部屋に入る。  どうして凪が由莉の住所を知っていたのかは、とりあえず今は考えない事にした。   「ゆっくり休んで。明日また会いに来るね」 「うん。ありがとう」  家の前でそれだけ言うと、特に部屋に上がりもせずにあっさりと凪は帰ってしまった。  現在の時刻は夜の七時。  まだ遅い時間ではないし、今から東条の家に向かえば、十分に話す時間はあるだろう。  明日また凪が迎えにくるのならば、その前に話せる時間は今日くらいしかない。色々と話を進める前に、東条にはきちんと報告をする必要がある。 (これは凪くんに頼ったりせず、私が一人で解決しなくちゃいけない問題だ)  鞄の中からスマホを取り出し、ゆっくりとメッセージを打ち込む。  どう伝えればいいのか悩みながら何回も打ち直し、結局できあがったのは「今から会いに行ってもいいですか」という酷くシンプルな文面だった。  既読になって直ぐ「迎えにいく?」と返信が届き、その優しさにまた少し胸が痛くなる。  こういうやり取りも無くなってしまうのかと思うとやっぱり寂しい。だけどこれが自分で選んだことなんだと言い聞かせて、「近くにいるから迎えはいいです」と返事を送りスマホをしまった。  話して、どういう反応をされるのだろうか。  東条のためにもこの方がいいと思って選んだのに、一方的な婚約破棄になるのかと思うと、どうしても気持ちが重くなる。  安心したって言いながら笑ってくれたら、それが一番嬉しい。  重荷になりたくない。  私の気持ちは最後まで隠し通すから、お互い良い形で終われてよかったって言ってほしい。  そんなことを願いながら足を動かし、行き慣れた東条のマンションに向かう。  今回で使うのが最後になるであろう合鍵が、なんだかやけに冷たく感じた。
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