195人が本棚に入れています
本棚に追加
新卒の由莉が働くことになったのは、老舗百貨店のサービスカウンターだ。
色んな企業のインターンシップに参加し、何百枚ものエントリーシートを書き、何回も面接会場に足を運んだ。
一体いくつの企業を受けたのか、自分でも数は覚えていない。
それでも由莉がもらえた内定は一社だけで、それも由莉が希望した職種とは全く別のものだった。
ヒートで定期的に休む必要があるようですし、納期があったり一人で抱える仕事は任せ難いですね。
弊社の百貨店のサービスカウンターはいつも多めに人員を配置しています。急な休みでも対応出来るので、そこに配属して良いなら採用したいのですがどうでしょうか。
最終面接で言われた言葉に、由莉は縋る思いで頷いていた。
何社受けてもお祈りのメールばっかりで、もう精神が限界だったのだ。
オメガの自分が雇ってもらえるならそれだけで十分だと、そんな思いで入社を決めて現在に至る。
大学で勉強した事とは全然違う分野で、思い描いていた将来とは全く違う仕事。
自分がベータだったら他の道に進んでいたのかも知れないと思うけれど、結局、それも含めて運命だったのだろう。
初出勤日、緊張した面持ちで東條百貨店サービスカウンターに立つ由莉の前に現れたのは、間違いなく由莉の運命の番だった。
最初のコメントを投稿しよう!