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ベッドに落とされた由莉の腰元を跨ぐようにして東条が覆い被さる。
すでに乱されてしまった服が完全に暴かれてしまい、空気に触れた肌がぶるりと震えた。寒さではなく、恐怖とかそういった類の感情のせいで。
「ま、待って……東条さん……」
「待たないよ。ちゃんと待っても良いことなんて何もないって分かった」
「……っ」
ヒートが終わったばっかりで、誘発剤の効果も切れたから症状は出ていない。
それでもそんなの関係なく、東条は最後までするつもりなのだろう。由莉の服を一枚ずつ剝ぎ取っていく手には微塵も優しさが感じられない。
番が相手じゃなくても妊娠は出来ると、相手を諦めさせるために子供を作ると、東条はそう言っていた。
そんなことが目的の行為、お互いに虚しくなるだけだ。
そもそもこんな形でするのは嫌だし、一度シャワーを浴びたとはいえ、凪に抱かれたばかりの身体を触らせてしまうのはもっと嫌。
「ほ、本当にこんな……するの……?」
「するよ。ただの脅しだとでも思った?」
「だって、こんなの絶対良くないから」
「ハッ。良くないも何も、もう全部最悪だろ」
下着だけを身に纏った状態の由莉の前で、東条も煩わしそうに服を脱ぐ。
自分の体は何度も見られたし触ってもらっていたけど、東条の裸を見るのはこれが初めてだ。
想像だけだったものが一気に現実味を帯びて怖くなる。
逃げたい。こんなのやっぱり駄目だ。
まだちゃんと話が出来ていないし、何も解決していないのに。
「こ……こういうことするのは、絶対に違うと思っ」
「喋るな」
「ん……っん、んぅ……」
口付けで言葉が封じられて、東条の舌がそのまま由莉の唇を割って入る。
胸を押し返そうとした手は一纏めにされてベッドに縫い付けられ、舌が絡み合う水音が静かな室内に響いた。
東条さんとする初めての深いキスなのに、こんなに苦しくなるなんて思わなかった。
呼吸も声も全部奪われてしまうんじゃないかと思うくらい乱暴で、無理やり取られた舌が深い所で絡む。
苦しくて怖いだけで、全然気持ち良いと思えない。
凪としたキスはこんな風じゃなかったのにと、最低なところで東条と比べてしまう。
キスなんて殆どした事ないけど、東条のキスが上手いことはちゃんと分かるのだ。
それなのにこの人は違うんだと、絶えずに脳が訴えてくる。
頭が痛い。背中がゾワゾワする。
運命の番のはずなのに、なぜか急に知らない人のように感じてしまって全然安心できない。
内臓を弄られているようなイメージが脳に流れて、嫌悪感と恐怖心だけがどんどん募って涙が溢れた。
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