違う匂い

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 完全に息が上がった状態にされてから唇が離れるが、手首は押さえつけられたままで逃げられない。  キスだけでこんなになってしまうのに、これ以上なんて絶対にできない。 「……や、やめてください、ほんと……ごめんなさい。できない」  カタカタ震えながらそう口にするが、冷めた表情で見下ろされるだけで止めてくれる様子はない。  それどころか手首を掴む力に更に力が入り、冷たくなった瞳に影が落ちる。 「キスだけでそんなに嫌がるくせに、俺のこと好きとかよく言えたな?」 「は……」 「泣いてもやめない。何もしないで帰すなんて今更できるわけないだろ」  由莉に対しての好きという気持ちが残っているのかなんてもう分からない。  嫉妬や独占欲のようにも見えるけれど、ただ意地になっているだけのようにも思えてしまう。  ただ、もう何を言っても聞き入れてくれないことだけは分かった。本当に何をされても我慢するしかないのだと、最悪の現実だけを悟ってしまう。  泣きながら呼吸をすることしかできなくなった由莉の腕の拘束が一旦解かれ、東条の手が今度は太腿に移動する。  思い切り開かせてから内腿をなぞり、されるがままの現状に由莉は小さく息を漏らした。 「キスマーク、胸だけじゃないんだな。こんなとこまで触らせた?」 「……っ、見るの、やめて……!」 「他の奴には見せたのに? ホント、最悪……」 「っひぅ……!」  内腿の痕を上書きするように唇が触れ、痛いくらいの力で同じ場所を吸われた。  まだ下着だけは残された状態だけど、際どい場所を晒している事には変わりない。羞恥と痛みで、じわじわと心が黒いものに侵されていく。 「ぅあ、やだ……! ねぇ、きいて……っ」 「うるさい。そんな事しか言えないなら喋るな」 「もっ、や……いや、触るのこわい……やだ……っう」  そのまま下着まで抜き取られて、身を守るものは全部なくなってしまった。  直接恥ずかしいところを触られるが、何をされても頭が痛くて苦しいだけだ。胸を触られても陰核を弄られても、いつもみたいに気持ち良くなんてなれない。  ヒートじゃないから感じない、というわけではないのだろう。  今まではヒート時以外でも、東条と過ごしている時に少し手が触れてしまっただけで、もっと触って欲しくなったりしたのだ。  そんな甘い感情、今は全然湧いてこない。  番以外の相手を拒むようにと、ひたすら脳が命令を出している。  東条の指が軽く入り口をなぞる。  全く濡れていないことを確認すると一旦離れ、息をつく間もなくトロッとした液体がそこに垂らされた。 「……っ⁈」 「ただのローションに過剰反応しすぎ。濡れないんだから仕方ないだろ」 「あ、ぅあ……っひ……」  濡らされたソコに再度指が触れ、少しずつ奥に沈んでいく。  滑りをよくして、ただナカを広げるだけの行為。逃げようとして無意識に腰が浮くが、そんな行動は何の意味もなかった。 「う……っく、んぁ、は……」 「苦しい? でも慣らさないと駄目だから、我慢して」 「んっ、は……っんぁ、あ、う」  自分の嬌声なんて耳障りだと思った事しかないけれど、いつも以上に苦しそうで耳を塞ぎたくなる。  ローションがかき混ぜられる音と、苦しそうな由莉の声だけが部屋に響く。  たまに東条も声を発するが、その言葉はどれも由莉を蔑むようで冷たい。 「どこまでしたんだっけ? 言って」 「うっ……ひ、ぁ」  「はっ、全部やってるか。番相手にハメるの我慢する意味ないもんな」  どんどん荒くなっていく言葉遣いに、東条の機嫌が悪くなっているのが分かる。  由莉が泣いて嫌がって逃げようともがくばっかりで、拒絶するような行動しかできていないのだからその反応も当然だ。 「もういいか、十分だろ」 「……っあ」  由莉のナカに入っていた指が抜かれ、その瞬間にぐぷっと嫌な音を立てた。  こんな状態で、よく興奮できるものだなと思う。  黒いボクサーパンツから取り出された東条のモノは、腹に付きそうなくらいに硬く反り勃っていた。  
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