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Flashbacked
私の手にカミソリが握られている。
周りは血にまみれていて、裸の自分も血でまみれている。
どうして、こんなことをしてしまうのだろうか。――なんだか「生きている意味」が分からなくなる。どうせ、こんな私なんか死んでしまえば良いんだ。私が死んだところで、誰も弔ってくれる人間はいない。
――痛い。傷口が痛い。痛い、痛い痛い痛い痛い!
心臓の鼓動と同調するように、傷が痛む。
心が痛いから、躰に傷を付けてしまう。それは自分でも分かっているんだけど、どうしても自傷行為をやめられない。そういう自分が情けなくなる。
自分を落ち着かせるために、まぶたを閉じる。視界が遮られると、心臓の鼓動ははっきりと聞こえるような気がした。
生きている音。生命活動を続けている音。血液を循環させている音。それが鼓動の正体だということは分かっている。――少し、心が落ち着いたかもしれない。私は再びまぶたを開けた。
そして、そのまま乳房の間に手を当てた。――脈を打つ感覚が、肌越しに伝わる。私は、生きているんだ。
生きている意味を見出した私は、その血にまみれた躰をシャワーで洗い流して、何事もなかったかのように振る舞うことにした。
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