2人が本棚に入れています
本棚に追加
「山田君。山本リンダの『狙いうち』という曲を聴いてごらん」
山田刑事はスマホを取り出した。チェックしたのは新しい学校のリーダーズのほうだった。
「こっ、これは!山基凛が山治郎の財産を引き継ぐということですか?」
「山治郎と凛のDNAを鑑定したらわかることさ」
一週間後、山田刑事が捜査一課室に飛び込んできた。
「山村係長!DNAが一致しました」
「そうか。やはりな。そう言えば今日だな。財団の記者会見があるのは」
その日の午後、山丘の遺言により設立された新たな財団の発表があった。
理事長に山基凛。監査役は山下友久。基金運営責任者が山中信也という体制だった。
「係長。結局、今回のヤマには事件性はなかったんですね」
「山田君。そうとも言えないよ。山丘山治郎にとっては凛の登場は大事件だったはずさ。何せ山基は滅多にない姓だからね。山治郎は昔を思い出し凛の生い立ちを調べさせた。すると、わかったんだよ。凛が娘だったのを。山治郎にとって家族を持つことは夢。心から償う決心をしたのだろう。既に死期を悟っていた山治郎は、ファンだった山本リンダの歌をヒントに入念なシナリオを練った。つまり、山治郎が期待をよせる周囲の者と唯一の家族である凛が丸く収まる一世一代の勝負に出たんだ。さらに付け加えるなら、おそらく凛の母親は山治郎が山本リンダのファンだったのを知っていたのだろう。そして狙ったんだ。いつか来るであろう山基凛と山治郎との出会いを...」
「係長。係長の推理は相変わらず深く明察で山場にとんでます。感動しました」
「いや~、山田君。勘だよ。勘。ただの山勘」
「係長。山治郎の戦略も見事でしたね。さすが海千山千の山形の山林王山丘山治郎」
「山田君。山治郎のような人物のまたの名を知っているかい」
「いいえ。わかりません」
「山師だよ」
最初のコメントを投稿しよう!