《出会い》

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《出会い》

 バーから戻りコンクリート色の建物に行き着いた河南は家に帰ってきたことへ安堵した。簡素な家に戻り、机に向かってなにかを書き出している。  それは火の村と水の村、土の村が和平に分かつことの平和条約であった。 「えっと、ここにサインをして土と水の村長に提出をすれば……それで良いんだよな。あー! こういうのってよくわかんねぇんだよ!!」  頭を掻きながらボールペンを放り投げた。カチャンと落としては取りに行く河南ではあるがこの和平条約が通じるのかとよく思う。紙切れ一枚で平和になれるのならそうしているからだ。だがそうしない限り、水の村と土の村との和解は難しい。  もともとは水の村も土の村とも拮抗状態ではなかった。だが水の村の王族が殺されて政権が揺るがされてお互いに貧困になり、金の巡りも悪くなり、皆が争った。  互いの村がのし上がろうと喧嘩腰になって現在は火の村が弱体化している。だがそれを火の村で自警団の長である河南が立ちあがって火の村を守り続けている。  ボールペンを机に置いてから河南はアタッシュケースを取り出す。  中身は異形の銃、――白道であった。 「この銃のメンテでもやるか。ふぅん……なるほどな、造りが精巧だから緻密なんだな。ちゃんとメンテしないと、錆びちまう」  銃の潤滑剤と精巧な器具を用いて掃除をしながらメンテナンスを行う。案外、難しい銃ではあるが慣れてくるとやりがいがあるものだ。 「やっぱり銃のメンテは落ち着くな、さて。――できた」  白銀の銃に纏いし白道の姿に河南は笑みを零した。これなら機能性もあとで試せば抜群だとよく思う。  大きな欠伸をした。時刻は20時を指している。健康優良児の河南には眠いようだ。 「……シャワーでも浴びてくっか。ふわぁ~早く、シャワー浴びて寝ようと~」  脱衣室で服を脱いでシャワーを浴びている河南は声が聞こえるだろうか。  銃の白道が呼応した。あいつが欲しいと。欲しいと啼いているのだ。 「ふぅ、すっきりした。ヤニ臭い匂いから解放されて十分だぜ」  ベッドに寝転んで濡れた髪のまま眠ろうとした。だがその前に――ゴトリと音がした。  河南が目を一瞬で覚ましてぎらつかせた。 「誰だ」  持ち歩いているS&WのM29を標的にかざそうとすれば――誰かに抱き締められた。ニコチンとタールの強い香りがする。 「おい! 誰だてめぇっ!」 「誰って……あなた様の(しもべ)ですけれど?」 「――はぁ?」  暗い室内にて抱き締められたので河南は抱き締めている男らしき局部を掴み上げた。「キャウゥンッ!」動物のように啼いたかと思えば、河南はすぐさま離れて電気を付ける。  そこには褐色肌に筋肉質な身体、そして白タンクトップを着た――ウサギ耳のおっさんがそこに居た。 「は……お前、誰?」  すると男は懐から取り出した煙草に火を付けた。 「俺は白道。あなた様の僕だぜ」  男が勇ましく笑った。
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