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《襲撃》
足を引きずってこけそうになるのを抑えながら河南はアジトへと向かう。すると生あくびをしている白道が身体を支えようとしてきた。
「いらねぇよ。――自分で歩ける」
「そんな貧相なこと言うなよ。俺、主様とのエッチで体力満タンだし~?」
「……マジでお前と契約解消したい」
白道をくれた村長に聞けば解除方法が判明するかなと考えるが頭を振ってやめる。あの減らず口で若作りの老人が簡単に口を割るとは思えない。
すると今度は後ろからバイクの轟音が聞こえた。――鳴り止まない排気音に河南は先ほどよりも強い舌打ちを打った。
「お、なんだこいつら? 河南様のダチか?」
「ちげぇよ、――敵襲だ」
敵たちがナイフを持って現れた。さながら奇想天外な世界からやってきた野蛮人という表現が正しいか。舌で舐め取りながらリーダーである刺客があくどい笑みを浮かべた。
「よぉ、河南ちゃん~? 水の村での支配下になることは覚悟できたかぁ~?」
「できてねぇよモヒカン野郎。こちとらイラついて手加減ができねぇ」
ガンベルトに手を差し向けようとした瞬間に白道が河南の手を取った。手を取ったかと思えば――甲にキスをされる。
周囲の人間も、河南もどよめいた。
「な、なにしてっ――」
「俺を使え。俺がお前の手となり足となる」
すると白道は姿を瞬く間に変化したかと思えば、白銀の銃に変貌を遂げた。筒が長くカートリッジが付いたリボルバーの銃は重厚感がある。
『よぉ、河南。俺を使って――踊れ』
脳内で白道の声が聞こえたかと思えば、電池が切れたように河南が項垂れた。かと思えば黒き瞳を赤くさせ、周囲の人間に撃ち込んでいく。
その速さは神速かと思われた。
「な、なんだこいつ……! いつもより、――早ぇ……」
肩や脚に撃ち込んで再起不能にさせる河南は意識を取り戻した。眩暈がするほど頭がくらくらし、頭痛がする。
「痛ぇ……なん、だ……?」
「あーあ。身体の方が持たねぇか。まぁ最初の”リンク”だから仕方ねぇか」
「リン……ク?」
崩れ落ちる河南の軽い身体を人間化した白道が持ち上げて担ぐ。今の状態はいわゆるお姫様抱っこだが、夢心地の河南はそんなことはどうでも良かった。
「おい、河南様。アジトはどう向かえばいい?」
「――河南で、良い」
舌ったらずな言葉で銃を撃ち込めた快感に蕩けそうになっている河南は白道の身体に寄り添う。筋肉質な身体に包まれるのは悪くないと思うのはどうしてか。
白道が悪戯な表情を見せた。
「よし、河南。俺ともう一回、リンクしてお前の頭の地図を覗かせてもらうぞ。いいな」
「うん……。そうしろ」
笑みを零しながら眠る主の姿に従者である白道は笑う。そして彼の唇に軽いキスを送るのだ。河南の唇は柔らかかった。
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