《自警団火炎》

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《自警団火炎》

 この地には火の村と水の村、そして土の村が拮抗状態であった。そのなかで火の村は最弱だと言われており、植民地となりかけていた……はずだった。  なんと一人の若い青年が自警団をつくりあげ、(おさ)として成り立ち、水の村と土の村の刺客たちを追い払ってきたのだ。  ただ、若い青年を含めた自警団たちは願っている。本当は三つの村が和平を結んで暮らしていけるような――そんな平和な日々を送れることを。  火の村の自警団、『火炎(かえん)』のアジトにて一人の青年が銃を磨いていた。ハンドガンでリボルバー式の銃を磨き、弾丸をセットしている青年へ一人の少年が声を掛けに来る。 「おーい、カナ兄! 水の供給が来るって!」 「今行くから待ってろ。よし、これで良いな」  青年の名は河南(かなん)と言い、今年で23歳になる若い青年だ。彼が15の頃に自警団の火炎を設立した。  河南はリボルバー式の拳銃S&WのM29をガンベルトに掛けて出て行った。 「ほら、こっちこっち!」 「おいおい、久須志(くすし)。引っ張るなって……」  黒い髪をウルフカットにし、前髪を流して切れ長な黒い瞳は畏怖さを感じさせる。レザージャケットを羽織りデニムのパンツを履いている様はアウトローさながらだ。だが今は村の少年である久須志に引っ張られて困ったような表情を見せていた。水はかなり大事だが、河南としては村の連中に分けてやりたいのが本位である。  水の商売人が訪れており、久須志が鮮やかな水色の髪を振り乱しながら金を手にした。 「すいませ~ん! まだ水残ってる?」 「あぁ、まだ残っているぜ。それと河南、――村長がお呼びだぞ」  タンクに水を注いで久須志と河南に渡す。久須志はまだ幼いので河南が持って行った。 「村長が? なんの用だ?」 「さ~てね。いつものバーで待っているってよ」 「……俺、いつも言っているよな。酒が飲めねぇ下戸だって」  すると水汲み屋は「俺に言うなよ」ほかの客を捌きながら水を渡しに行った。内心で舌打ちをしている河南に久須志は爛々とした表情を見せる。 「俺、大人になったら酒飲んで煙草吸えるようなかっこいい大人になりたい!」 「え、マジかよ……。久須志やめろ。そんな大人になったら早死にしちまう」 「えー!!! だってかっこいいじゃん~、カナ兄は飲めないし吸わないからだろ?」  水色の髪に大きな瞳を輝かせて久須志は笑う。この笑みが酒と煙草に溺れるとなると胃がキリキリと痛い。  久須志が住んでいる家に着きタンクを置いたところで、河南は久須志の頬を両手で引っ張った。 「い、いひゃい~」 「いいか、久須志。お前は酒や煙草に溺れるような人間になるな。そんな大人はかっこよくないぞ」 「いひゃいよ、カナ兄~」 「いやだ。お前が酒と煙草を吸わないことを誓うまでやめない」  河南は普段の切れ長な瞳をニヒルに笑うのだ。
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