第九章 ①②②

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第九章 ①②②

カチャカチャと食器がぶつかる音で目が覚めた。永剛は半身を起こし辺りを見渡した。 昨日の夜の事を思い出そうとすると、頭が激しく痛んだ。奥歯を噛み締め痛みに目を細める。 薄いグリーン調のカーテンの隙間から暖かい陽の光が入り込んでいた。このようなカーテンは見たことがなかった。という事は今、自分がいるのは家ではないという事だ。 病院?と永剛は思ったが、季節外れの炬燵がある事で、それは違うとわかった。頭の隅に大男に連れ去られた?というような考えも浮かんだが、意識を失う寸前、誰かの叫び声を聞いた記憶があった。 確かその声で大男も逃げ出した筈だった。となれば自分を助けてくれた誰かが、ここに運び込んでくれたのだろう。永剛は尿意を覚え頭を押さえながら布団から出た。未だ朦朧とする頭の中で昨日の事を思い出そうとする。が余り上手くいかなかった。 トイレに向かう為に立ち上がると目眩に見舞われた。側にある炬燵に手をつきバランスを保った。 再び起き上がると自分が真っ裸になっている事に気がついた。 「起こしちゃった?」 声のする方を見ると、昨日の夜、老婆の店の前に立っていた、確か楓という女性がエプロンで手を拭きながらこちらの部屋へと入って来た。 永剛は両手でペニスを隠し床に座り直した。 「あの、僕の下着は……」 「洗濯中だよ。どうして?」 「いや、その僕、裸だし……」 「そうだよ。だって君、上着もジーンズも血塗れだったし、おまけにお漏らししてたんだから、裸にするしかないでしょ?」 「は、はい。ですね」 永剛はいい着るものは無いですか?と楓に尋ねた。 「無いわ。それに今更、気にする事無いじゃない?」 「どうしてですか?」 「昨日夜、君は散々私に触らせたり見せたりしたんだから」  「嘘⁈」 「嘘よ」 永剛を揶揄うように楓は笑った。 「びっくりしたぁ」 「でも、その嘘は直ぐに本当の事になるんじゃない?」 楓はいい永剛の前に跪いた。ペニスを隠している永剛の両手を掴み、その手をペニスから離した。 「とっても元気じゃない?」 楓は笑みを浮かべ永剛を見上げた。 「オシッコがしたくて……トイレ何処ですか?」 楓はそっちよと流し台の方を指差した。 永剛はペニスを隠しながら立ち上がるとトイレに向かった。その直ぐ後に楓がついてくる。トイレの戸を開け中に入り閉めようとした時、楓が戸を押さえた。 「オシッコしてる所みたいなぁ」 そういうとトイレの中に入って来た。永剛の手首を掴みペニスを隠している手を払った。勃起した永剛のペニスを摘み、便器に狙いを定めるよう、鬼頭を下方向へ下げた。 「こんな感じで良いのかな?はい。オシッコ出して良いよ」 そう言われて、はい、わかりましたと簡単に出るものじゃない。永剛は目を閉じて落ちつけと言い聞かせる。楓がどうしたの?出ないねぇと言った。そして永剛のペニスの前に顔を出した。 「どうしたのかしら?」 そういうと同時に尿が出て楓の顔に放尿してしまった。楓がわっ!といい避けたは良いが、ペニスを摘んでいた手も離した為に、オシッコがあちこちに飛び散った。慌てて永剛はペニスを掴み、便器へ狙いを定めた。 「もうっやだぁ」 楓は永剛のお尻を叩くと、 「終わったら掃除しといてね」 そう言ってトイレから出て行った。 きっと顔を洗うんだなぁと永剛は呑気にそう思った。 トイレを出て洗面所で手を洗った。ペニスを隠しながらリビングへ入ると楓の姿はなかった。 水の音が聞こえたので楓はお風呂に入っているのだろう。永剛は炬燵に入り、楓が出てくるのを待った。 炬燵台の上には立て鏡があり、永剛はそれを手に取り、殴られた箇所を眺めた。それほど傷は深くないのか、包帯は巻かれていなかった。眉間の上辺りにバンドエイドが縦に4枚貼られていた。どれだけ切れているのか傷を見たかったが、バンドエイドを剥がすのが痛そうだったのでやめておいた。その周囲が青痣になり鼻の方まで腫れていた。 立て鏡を炬燵台に戻すとタオル一枚の姿で楓が入って来た。濡れた髪をハンドタオルで拭いている。永剛の横に座ると 「オシッコを顔にかけちゃダメでしょ」 と笑みを浮かべながらそう言った。 不可抗力だと言い返したかったが、永剛は素直に頷いた。 「楓、さんでしたよね?」 「そうね」 「助けてくれてありがとうございました」 「本当は助けたって程じゃないけどね」 「え?どういう事ですか?」 「君がママと別れた後、すぐにね。たまたま知り合いのお客さんが通りかかってさ、誘ったんだけど、今日はいいって断られたの。私、その人の前に立って顔を見上げたら目を逸らすものだから、直ぐに既に他のお店に行った帰りだななぁって思ったの。直感っていうやつ?私そういうのよく当たるんだぁ。でわかってたけどもう一度誘ってみたら、私を避けて逃げるものだから、あ、この人、私以外に新しくお気に入りの女の子見つけたんだ!と思ったの。この仕事はさぁ、取った取られたは仕方ないから良いんだけど、取られた私は黙っている訳にはいかないじゃない?だこら又、そのお気に入りになった女の子から奪っちゃえって思ってさ、その人の手に指を絡ませながら、帰そうとしなかったんだ。勿論、あんまりしつこくするのは良くないけど、私だってお仕事取らなきゃ生きていけないもん。だから今日はごめん、又今度行くよっていうその人に対してしつこく追い縋っちゃってさ。結局、最終的にはダメだったんだけど、で、その人を途中まで送っていったその帰りに君があの路地裏に大男と入って行くのが見えたからさ。虫の知らせというか嫌な予感がしたのよ。それで後をつけて覗き見してたら、いきなりあんな事になったでしょ?私びっくりしちゃって、周りの人に「人殺しよ人殺し!」て言いまくったらさ。知らない男達が集まって来てね。それで大声で叫んでくれたの。そしたらあの大男が逃げ出してさ。捕まえられなかったのは頭に来るけど、本当、君が無事で良かったぁ」 そうか。あの声は楓さんじゃなかったのか。 まぁそりゃそうだ。女の人1人であの大男に勝てるわけがない。きっと数人の男達があの大男を追いかけてくれたのだろう。 楓さんはいうと永剛に名前を聞いた。 「永剛。英永剛」 「永剛かぁ。何かカッコいい名前だね」 「そうですか?」 「永剛だから、えーちゃんだ。えーちゃん 矢沢永吉と同じだよ」 永吉じゃないけどと思ったが文句は言わなかった。名前の最初が永だから、えーちゃんと呼ばれるのも仕方がないなかも知れない。 そう言われて、永剛は思った。 今まで誰一人として自分の事をえーちゃんと呼んだ人はいなかった。それだけ友達がいなかったというのも関係あるが、それでもえーちゃんとあだ名のように呼んでくれたのは親しみを感じられ嬉しくもあった。その相手が楓さんというのは、嫌な気持ちはしなかった。 「で、病院に連れて行こうと思ったけどさ、保険証もないし、ショールで額の傷口を押さえてたら血も治まって来たから、家に連れて来たってわけ」 「え?もしかしてあの格好のままですか?」 「違うわよ、君を路地裏に寝かせたまま、一旦お店に帰ってママに気分が悪くなったからって無理に帰らせて貰ったの。ママも私が私の上客の男の人に断られてるの見てたから、ショックを受けたんだと勘違いしてくれたんだと思う。普段はお客を取れなかったら、絶対に帰してくれないのに、昨日は珍しく素直に帰らせてくれたもんね。それで着替えてえーちゃんを拾って帰って来たってわけ」 「そうだったんですね。本当ありがとうございました」 永剛はいい、楓に微笑んでみせた。その浮かべた笑顔の裏では、頭の中にあの老婆の言葉が浮かんでいた。 「他人の子供に手を出すんじゃない」と その言葉で楓さんは小児性愛者なのだろうかと永剛は思った。 年齢的にその線引きが幾つまでかはわからないが、とりあえず僕は合格ラインにいるようだった。 「気にしないで。私は出来る事をしただけだからさ」 楓さんはいい、いきなり身体に巻いていたバスタオルを外した。 「でもね私がえーちゃんを助けた事以外に、 出来るもっと凄い事があるんだよ?」 楓さんはいい、永剛の股間に手を伸ばした。炬燵の中で既に勃起していた僕のペニスに触れると楓さんは優しい笑みを浮かべながら 「えーちゃんのエッチ」 といいコタツの中へ潜り込み永剛のペニスを口に含んだ。厚く暖かい舌がペニスに絡みつく。大量の唾液が鬼頭を包みそれを楓さんの唇が吸い付いた。ジュルジュルと音を立てられた矢先、永剛は楓さんの口の中に射精した。コタツから出て来た楓さんは口を開け舌の上にある永剛の精液を見せた後、ゴクリと飲み込みその口で永剛にキスをして来た。そして永剛の唇を強引に開かせ自分の精液が絡みついた舌で歯茎や舌を舐め回した。永剛もそれに応えながら楓さんを抱き寄せた。 楓さんは足で、コタツを蹴飛ばすとまだ勃起しているペニスに跨った。その時、母のとは違う、と永剛は思った。その違いがより永剛を興奮の波へと誘った。楓はその波の上で揺られながら腰を動かしていった。
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