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第二章 ①④
結局、夜中の2時まで飲み、2人して署に戻った。各々、自分のデスクの椅子に座ると、数秒で寝入ってしまった。
7時半に泡沢は小川さんに叩き起こされた。
さして飲めないお酒を飲まされたせいで、金槌で殴られたかのような激しい頭痛に見舞われながら、泡沢はトイレへと向かった。
小川さんはケロッとした顔で、部屋を出ていく泡沢の背中に向かって「情けねーなー」と発した。
泡沢は水で顔を洗うと少しだけ気分が晴れた。
相変わらず頭は痛いが、薬を飲めば何とかなるだろう。
そう思いながらハンカチで顔を拭こうとしたその時、吐き気に見舞われ、大便器に駆け込んだ。一気に吐き出すと身体は楽になった気がしたが、頭痛はさらに酷くなった。
泡沢は洗面所でうがいをし、部屋に戻り頭痛薬を甘いコーヒーで流し込んだ。
朝の捜査会議では頭痛のせいで何一つ頭に入らなかった。小川さんが何か発言していたが、その声の大きさにすら、腹が立った程だった。
それでも、昨夜のスナックで会ったあの女の事を話さなければならない。連続殺人事件との関連は無いかもしれないが、あの女は何かしらの悪事を働いている。
それは自分の股間がハッキリと証明しているのだ。早く会議が終われと願いながら、少し落ち着いて来た頭痛を和らげるように、泡沢は髪の毛をかき上げた。
解散!という声でホッとし、泡沢はゆっくりと席を立った。部署に戻ると小川さんが、泡沢の目をジッと見つめて来た。
「キツいなら帰っていいぞ」
「そういうわけには行きません」
「死人みてーに、顔が真っ青なのにか?」
そう言われ泡沢はスマホのカメラを立ち上げ自分の顔を見た。小川さんのいうように、確かに今の自分はまるでゾンビのようだ。
「ですが、今日は防犯カメラの見直しですよね」
「だからだよ。そんな状態で延々と映像みてたら、吐くぞ?」
さっき吐きました、とは言わなかった。
だが確かにこんな体調では集中して映像を見る事は出来そうにない。泡沢は小川さんの言葉に甘える事にした。
「もう2度と誘わねーから安心しろ」
それはそれで寂しいものだが、とりあえず今の時点でのその言葉は有り難かった。
「すいません。お言葉に甘えさせて頂きます」
小川さんは、黙ったまま、早く帰れといいたげに、シッシッと手を払った。
荷物をまとめ帰宅しようとした時、泡沢は慌ててその手を止めた。
「小川さん」
「まだ何かあんのか?」
「昨夜、連れて行って頂いたスナックの事でちょっと」
「ママにでも惚れたか?」
小川さんがニヤニヤした顔を泡沢へ向けた。
「違いますよ」
「なら、なんだよ」
「ママ以外にもう1人いたじゃないですか?」
「あぁ、名前は確か…」
「ミミです」
「お、そんな名前だったか」
「はい」
「で.そのミミがどうかしたのか?」
「今回の連続殺人事件と関連があるかはわかりませんが、間違いなくあの女性は、何かしら犯罪を犯しています」
「何でそんな事がわかんだよ?」
小川さんが呆れた風に言った。が、直ぐに刑事の表情に戻る。
「お前、まさか」
「はい。そのまさかです。側に座られ、手が触れた瞬間、勃起しました」
「それは、たまたまお前が溜まってただけじゃねーのか?」
「私もその可能性があると思い、トイレに行った時、2回シコりました。それで戻ってミミに近づいた時の反応は…」
「ビンビンだったわけか」
泡沢は頷いた。
「ったく、そういう事は早く言えってんだ」
言葉とは裏腹に小川さんは満足そうな笑みを浮かべていた。眼光鋭く泡沢を見上げる。
言おうとしたけど、小川さんが全く帰ろうとしなかったからじゃないですか。改めてその時の気持ちが心の中に蘇る。
「どちらにしろ、今日のお前は使い物にならねーから帰って休め。だが、明日はしっかり出て来い。いいな?」
「わかりました」
泡沢は頭を下げて部署を出た。
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