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第三章 ②⓪
3杯目のビールに口をつけた時、スーツのポケットの中のスマホが震えている事に気がついた。
口に運んだグラスをカウンターへ置き、ポケットの中に手を入れた。
取り出し液晶パネルを眺めると、小川さんからの電話だった。
席を立ち、一旦、ミミにすみませんといい、店を出た。店内の客は泡沢1人だったが、犯罪に関与していると思われるミミに電話の内容を聞かれたくない。
スピーカーにするつもりは最初からないが、声の大きい小川さんの事だ。音漏れで聴こえないとも限らない。
礼儀としての行動ではなく、泡沢はそのように危惧した為、店内から出る事にしたのだった。
「ママが殺られてるぞ」
普段から落ち着き払い物怖じしない小川さんの声が震えている。恐怖というより、寧ろ怒りからの震えだろう。
「今からいう住所にお前も来い!」
慌ててメモ帳を取り出し慌てて住所を記入する。
ここからだと車で15分くらいはかかる距離だ。
「タクシーでも何でもいいから急げ!」
一方的に電話を切られた泡沢は、小川さんは所轄の警察には連絡したのだろうか?それともあの人の事だ。
県警全署員を巻き込むくらいの勢いで、呼び出しているかも知れない。
泡沢は一旦、店に戻った。
「すいません、ちょっと呼び出しをくらいまして、今日はこれで帰らせて頂きます」
財布を取り出すとカウンターの向かいにいたミミがその泡沢の手の上に自分の手を添えた。
「今夜は奢らせて頂きます」
「いや、そういうわけには…」
ミミは頭を振り
「事件なんでしょ?」
といい泡沢を見つめた。
泡沢は一瞬、驚いた表情を浮かべた。だが何も返さず頭を下げた。ミミは泡沢や小川さんの事を刑事だと見抜いていたようだ。
ひょっとしたらママから耳にしていたのかも知れない。幾ら酒が入っていたとしても、小川さんがママに自分は刑事だと名乗ったとは考えにくかった。
恐らく風貌や言動からママはそのように予測し、頻繁に訪れる小川さんの姿からある程度確信を持っていたのかも知れない。
ミミの一言で泡沢自身も動揺を隠しきれていなかった。一瞬の事だとはいえ、恐らくは気取られただろう。
ホステルという職業柄、数多くの人と接する。自然、見る目も養われ、洞察力にも磨きがかけられる。
飲み屋のママの助言は正しい、助けられたという人は世の中に五万といる筈だ。このミミという女性が、どれだけの人と会い話して来たかわからないが、まだ2回しか会っていない泡沢の職業について個人的に気づいたのであれば、余程の慧眼の持ち主かも知れない。
「なら今回は甘えさせて頂きます」
そういい、泡沢は財布をしまった。
チンポが反応している為、刑事というのいつかわかる事というのもあるが、逆にミミの反応を見たいという欲求も複雑に絡み合い、泡沢はミミにママが殺害されたようですと、わざと聞かせた。
泡沢の言葉を聞いたミミは一瞬、放心状態に
なり、唇を震わせた。
「う、うそ……」
泡沢はこの表情をみて、ミミはママ殺害には無関係かも知れない、と思った。
「さっきの電話は小川さんからでした。第1発見者です。なので間違いはありません」
「そう、ですか…」
ミミは項垂れ、カウンターの下を見つめた。
「こういう時、どんな言葉を発しても、気持ちを落ち着かせるなど出来ませんが、どうか、気落ちしないでください」
泡沢は頭を下げた。同時に更に股間が疼き勃起した。それを隠そうともせずに泡沢は後退りしながら店の扉に手をかけた。
「今日はお休みになさった方が良いと思います」
泡沢の言葉にミミは頷き、
「そうします」
と言った。
泡沢は店を出て勃起したチンポの位置を直しながら表通りに出た。タクシーを止めメモした住所を告げる。現場に向かっている最中、泡沢の頭の中ではずっと放心状態のミミの表情が浮かんでいた。
嘘には見えなかった。けれど……
ポケットに手を入れ、泡沢は勃起した自分のペニスをゆっくりとしごき始めた。
車内でヌク訳にも行かず、現場に着くまで激しくしごくわけにも行かなかった。
言われた住所に到着すると大きな公園を囲むようにマンションが立ち並んでいた。
タクシーの運転手の話によれば、この一画は同じ住所になっているらしい。都内のタワーマンション程ではないものの、外観はそれなりに高級感を醸し出している。
泡沢は料金を支払い領収書を受け取ると車外へと出た。タクシーが走り出すのを見守りながら付近に目を配った。
パトライトが明滅している場所を見つけ、そちらに向かう事にした。とりあえず公園を横切れば行けそうだった。
途中、公園内に設置されたトイレへと向かい、チッチの事を思い出しながらシコった。
タクシーの車内で散々いじっていたおかげで、イクのは早かった。便器に飛び散った精液を眺めながらトイレットペーパーと一緒に流した。
しっかり手を洗い、濡れた手で両頬を叩く。萎れた花のようにしょぼくれたチンポがパンツの中でしっくりくる程、遠慮がちに収まっていた。
現場のマンション前に着くと、玄関入り口の階段に小川さんが腰掛けタバコを燻らせていた。
「遅くなって申し訳ございません」
小川さんの頭頂部を見下ろす形で泡沢はそういった。小川さんは下から泡沢の顔を見上げ、シコって来たのか?と尋ねた。
「大丈夫です」
「よし。それなら行くか」
泡沢は小川さんの後に続き、ママの部屋へと向かって行った。
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