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再会
僕は駅前からタクシーに乗り、連絡があった警察署に向かった。
窓口で用件を伝えると、すぐに担当の警察官が下りてきてくれた。
「電話をしました高倉です。遠いところ、ご苦労様です」
「飯島です。お電話ありがとうございました」
僕も挨拶を返した。
「ではすぐにご案内します」
高倉さんは一階の奥へと僕を先導した。
「飯島さん、いえ、お父上は、二十年程、この町で一人暮らしをしていたようです」
日雇いの仕事をしていた時の親方に気に入られて、その人が身元保証人になってアパートに住み始めたという。
「あの、父に家族は? 再婚はしなかったんでしょうか?」
「はい。アパートの大家さんの話では、お一人のまま、近くのスーパーの駐車場の誘導係として真面目に働かれていたようですよ」
父の部屋の新聞受けに新聞が溜まっているのに気付いた大家さんが、警察を呼んで一緒に入ってくれ、孤独死を発見してくれた。
発見までそれ程日数は経っておらず、冬だったのもあり、遺体の状況はそんなに酷いものではないという。
身元はわからず、家族の連絡先を示すものもなかったが、高倉さんが父の部屋を調べていて僕の名前がわかったそうで、僕に連絡が来たのだった。
もう少し遅かったら、身元不明のまま荼毘に付されていたかもしれない。
父は七十を過ぎ、僕は別れた頃の父の年齢になっていた。
父の亡骸は保管庫から出されて霊安室の中央に安置されていた。
「ご確認ください」
高島さんは白い布を捲る。
肌の色はどす黒く変わり、髪は白髪、頬もこけていたが、それでも若き日の父の面影があった。
口元に小さな黒子があるのもそのまま、確かに父だった。
「父です」
僕は答えた。
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