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「――黙れ!」
テレビからどっと笑い声がきこえ、私もクスクスと笑う。「黙れ!」は、私の推し芸人ノイジーノットのツッコミ、ササケンの定番フレーズ。ボケのミーヤンが話をどんどん膨らませて止まらなくなり、ササケンがたまらず「黙れ!」と突っ込む。話の内容だけでなく、表情や身ぶり手ぶりも面白くて、何度見ても笑ってしまう。
「黙れ! だーまーれ!」
「……」
「ただいま~? ウ~ララ、かわいい、ネ! ただいま! きけ! 黙れ! バイバ~イ! ピピ!」
「ウララ、『ただいま』上手ね~。でも……『黙れ』を覚えちゃって、困ったなぁ」
「ただいま! ピチュ! んーただいま! 黙れ! きーけ! ウーラーラーチャン! アハハ!」
「……ダメだこりゃ。ふふっ、かわいいから、まあいっか」
私がノイジーノットのDVDをしょっちゅう見ているせいで、ウララが「黙れ!」のフレーズを覚えてしまった。
ふとスマホを見ると、LIMEが届いていた。
『明日19時にこのカフェに予約した』
送り主は、2歳上の幼なじみ、慶介くんだった。実家にいた頃からなんでも相談している、お兄さん的存在の慶介くん。彼とは職場が近くて、たまに仕事帰りにご飯を食べる間柄だ。広告業界で働いているから、おしゃれな店に詳しい。明日会う約束をしていたから、カフェを探してLIMEしてくれたのだ。
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