「おかえり」が言えない

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『それでねぇ……。姉さんにも会いたくてね。まだ一緒なんでしょう?』 「ああ、うん……」 『そう……。あのね、キヨシくん。いつまでもそのままでおくのも、姉さんが可哀想だと思うの。そろそろ……安心させてあげたらどうかな?』  俺は少しむっとしたが、叔母の言うことももっともだと思って、何も答えられず曖昧に唸ることしかできない。 『一度そちらにお邪魔して、今後のこととか少し話せないかな?』 「え……」 『今年でちょうど十三回忌でしょう? 姉さんにお線香もあげさせてほしいの』  は――?  なんだって?  今、なんと言ったんだミチコ叔母さんは。 『あたしね、今でも犯人が憎くて堪らないのよ。なんで姉さんが殺されなくちゃならなかったの? 優しくてお母さん思いだったキヨシくんは警察にもみんなにも疑われて、こんなに傷つけられて……。酷いったらないよね。あたし、事件を風化させないために犯人に懸賞金を賭けることにしたの。姉さんのお骨の前でそれを伝えるつもりよ。だからね、キヨシくん。お家に……』  俺は怖くなって、通話を切った。電源も落として、忌まわしいものを封じるように机の引き出しに放り込んだ。
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