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挑む男
山田と川田は東京山岳大学、略して東大の同級生。山を愛する者なら来るもの拒まず、誰でも入学できると言われ、実に胡散臭い、山に特化した学び舎だ。2人は入学以来の付き合いで同じ山学部に所属し、苦労を共にした親友と呼べる仲である。親友ということもあり、川田は無鉄砲な山田のことが心配でならなかった。
「山田、何もそんなに険しい道に挑まなくても良いんじゃないか?」
「いやいや。これが俺の生き方だ。誰でも目の前に大きな山があれば、それに挑み、乗り越えようとするってもんだろ」
「そうかなあ?」
「まあ、任せておけ」
「心配だなあ」
数歩進んだ山田は振り返らずに左手を挙げて小さく振った。川田は切ない目でじっと山田の背中を見つめていた。
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